日本政府の為替介入はむなしい結果に終わる--リチャード・カッツ

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一部の人々は、日銀が国内のマネーサプライを増大させるだけで簡単に円相場を下げることができるはずだと主張している。しかし、この方策はすでに実験済みであり、過去10年間を見れば、マネーサプライと円の為替相場はリンクしていないことがわかる。

仮に、円相場を引き下げられたとしても、それが物価調整後の日本の実質輸出を増大させることにはならない。なぜなら、輸出低迷の最大の要因は、日本製品の主な輸出先国の低成長にあるからだ。今日、日本から欧米への輸出品の多くは、「メード・イン・チャイナ」や「メード・イン・タイランド」というラベルを張ったコンテナの一部を成している。したがって、欧米諸国の景気が低迷し、アジアからの輸入が減少すると、日本からアジア諸国への輸出も縮小することになる。

その結果として過去12年間、欧米諸国の主な経済指標の変動と日本の輸出額との相関度が90%近くに達している。そのうえ、日本経済は輸出への依存を強めてきたために、日本のGDPと米国の主な経済指標とは、相関度が75%となっている。日本経済はすでに日本政府の力の及ばないところにあるのだ。

Richard Katz
The Oriental Economist Report 編集長。ニューヨーク・タイムズ、フィナンシャル・タイムズ等にも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。当コラムへのご意見は英語でrbkatz@orientaleconomist.comまで。

(週刊東洋経済2011年11月19日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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