タイ洪水の深刻度、日本企業への影響を独自調査

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「タイ洪水の影響がどこまで出るかわからない」。第2四半期の決算が相次いで発表される中、多くの企業から発せられる言葉だ。

タイはASEANの生産拠点として発展してきたが、その主翼を担ってきたのが日本。タイへの外国直接投資額は断トツで、1985年以降、累計で2・2兆バーツ(5・5兆円)の投資が行われている。それゆえに、今回の大洪水は日本企業にとって深刻な影響を及ぼしている。表は、本誌がまとめた、タイ洪水で被害を受けたり操業停止に追い込まれた企業の一覧だ。


 「被害の大きいタイ中部は歴史的に電子部品の工場が集積している」(日本総合研究所の大泉啓一郎主任研究員)と、話すように、精密機械や電子部品への影響は深刻だ。

デジタル一眼レフで世界シェア2位のニコン。ロジャナ工業団地にある工場は10月6日から操業停止が続く。「タイ一局集中」の生産体制を敷いているニコンにとっては致命的な痛手だ。タイ工場はニコンのデジタル一眼レフの9割近く、交換レンズの6割以上を生産する中核工場だ。在庫は1カ月程度とみられ、商品供給に不安も出てくる。木村眞琴社長は、「来年3月までには通常稼働に戻したい」と語るが、年間販売計画を540万台から470万台へと下方修正した。

カシオ計算機も浸水被害を受けた。タイ工場が占める時計の生産割合は全体の約1割と少ないが、年末商戦に投入予定だった「G−SHOCK」新モデルの発売延期を決めた。

年末商戦という稼ぎ時に向けて在庫を積み上げる時期だっただけに、悪影響は避けられそうもない。

電子部品メーカー被災で世界的な自動車減産に

ミニチュアベアリングは、ハードディスク駆動装置(HDD)やファンモーターなどさまざまな機器に使われる重要部品。その世界シェア6割を誇るミネベアは、過半をタイで製造する。洪水で、5工場の内、2工場が浸水被害を受けた。今期業績に与える洪水の影響を、売上高174億円、営業利益53億円と見ているが、この中にはHDD業界を中心に顧客の稼働が低下し、需要が一時的に細る間接的被害も含めている。

LSIや半導体部品を手掛けるロームも二つの工場が浸水した。中国やフィリピンでの代替生産を急ぐが、自動車向け電子部品の供給が滞るなど、影響が出ている。

部品メーカーなどの相次ぐ被害で供給が滞り、サプライチェーンが寸断されている。中でも自動車業界には深刻なダメージを与えており、その構図は、世界の自動車生産に影響を与えた東日本大震災と同じだ。

 

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