松下幸之助は「批判」に反論しなかった 聞く心によって「助言」に変わる

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素直な心で受けとめれば、批判は助言に変わる(写真 : sai088 / PIXTA)

松下幸之助に好意を持つ人々は多かった。しかし、すべての人から好意を持たれるというわけにはいかない。そばで見ていると、百人に1人ぐらいは批判する人がいたという感じであったし、批判すること自体を面白がる人もいた。

しかし、そうした人たちの意見が、たとえいかに理不尽であっても、松下は弁明したり、反論したり、論争を挑むということはなかった。それどころか、むしろ批判する人を招いて、さらに自分に批判されるべきところがあるだろうかと尋ねたりした。

老害批判にどう応じたか

ある人は松下が八十歳を一つ二つ越えたころから、しきりに、もう高齢なのだから現役の経営者から引退すべきだと、あちらこちらで執拗に言い回っていた。やがてその批判が松下の耳に入った。ある夜、私は松下と雑談しているときに、雰囲気を察して水を向けてみると、「きみはどう思うか」と尋ねられた。

老害という言葉がある。たしかに高齢になると一般的に頑固になり、新しいものへの対処が遅れがちになる。精神力も体力も衰えてくる。しかし、見たところずいぶん人によって差があるのも事実である。高齢でも気力溌剌として、次々に世の中のために新たな発想をし、行動を起こす人がいる。

逆に、若い人の誰もが若いかと言えば、決してそうではない。気力もなく、意欲もない者もいる。人さまざまである。だから、老害とは肉体的なことよりも、精神的に若さを失ったかどうかが問題だ。気力なく意欲のない人は、たとえ青年であろうと老害である。

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