ドンキが、中国人も地方客も惹きつけるワケ 変幻自在のビジネス戦略、イオン社長も賞賛

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免税品シェアが高い道頓堀店。深夜が稼ぎ時だ(撮影:今井康一)

ドンキは24時間営業していることも強みだ。訪日外国人は夕食後に買い物する傾向が強く、22時~23時台の深夜が1日の免税売上高でピークになっている。外貨7通貨でのレジ精算サービスも始め、今後もインバウンド効果を取り込んでいく意気込みだ。足元では中国経済の減速懸念があるが、大原孝治社長は「中国旅行者の買い物意欲が落ちている様子は見られない。今後もこのトレンドは続くだろう」と話す。

さらに、インバウンド需要が少ない地方既存店も好調に推移している。高橋光夫専務兼CFOは「小売りは地方がよく厳しいといわれるが、われわれにとってはパラダイスだ。一部は残存者メリットも発生している」と鼻息は荒い。九州が2ケタ近い伸びを見せているほか、東北や北陸なども堅調だ。

特に3000平方メートルを超える中~大型店に手応えを感じているといい、「われわれは物件をもっともっと欲しい」(高橋CFO)と訴えている。実際、全国各地から引き合いが強く、ローコスト経営に欠かせない居抜き物件を中心に物色している。2015年6月期は通期で過去最高の33店を出店するなど出店ペースが加速している。

主要客は若年層からファミリー層へ

顧客層の変化も継続的な増収増益につながっている。かつては若年層が主要客だったが、今はファミリー層に移行。大原社長は「今ドンキに来ている人はかつての客で非常に親和性が高い」と話す。結婚して家族を持ってもドンキファンということだ。

ファミリー層獲得へドンキは長崎屋を買収するなど食品を強化したことが大きい。ルイ・ヴィトンからトイレットペーパーまで何でも扱うドンキの中でも、売上高構成比で最大となる3割を占めるのが食品だ。売上高は前期比15.5%増の2086億円。お菓子や日配品、加工食品、ドリンク類が高い成長を記録。MEGA店は精肉を中心とした生鮮食品と総菜の強化が収益拡大に貢献しているという。

食品はほかのカテゴリーに比べて粗利率は低いが、食品を充実させることで顧客の来店頻度は格段に上がる。これによって、同社が得意とする粗利率の高い日用雑貨にも振り向かせる戦略だ。大原社長は「非食品は70%の構成比があり、粗利率でアドバンテージがある。食品の粗利率がゼロでも戦える。食品を制すれば集客を制す、非食品を制すれば食品も制することができる」と話す。

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