中国が狙う日の丸ハイテク磁石、標的はエコカー心臓部

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だが、中国以外での安定した調達先探しは難しい。住友商事はカザフスタンでジスプロを含む鉱床を開発中だが、11年供給開始の予定が大幅に遅れている。「新技術で使用量を減らしていく。その間に、中国以外からの産出が始まってくれれば」(日立金属の浜本直樹常務)と祈るしかないのが現状だ。

中国企業の参入招く2014年問題とは

さらに追い打ちをかけるのが「2014年問題」だ。現在、ネオジム磁石の基本特許は日立金属が保有している。だが、14年7月に期限切れを迎える。これを機に、中国企業のネオジム磁石製造への参入が加速するとみられているのだ。

中国のライバルに対して、日本企業は“ハンデ”を背負っている。中国側の政策誘導によって、レアアースには大きな内外価格差があるためだ。技術面で追いつかれた場合、コスト競争力で負ける懸念がある。

対抗上、日本の磁石メーカーが中国で現地生産しても解決は簡単ではなさそうだ。14年以降に中国企業によるネオジム磁石生産が一段と拡大すれば、ただでさえ逼迫しているジスプロの需給パンクは必至。「中国に進出しても肝心のジスプロを安定調達できる保証はなく、技術流出リスクを負うだけにもなりかねない」(磁石メーカー幹部)。

自国企業に先端磁石を作らせたい中国側は、工場進出による技術移転を求める姿勢をあらわにしている。まさに思うつぼだ。経済産業省は、中国進出を検討する磁石メーカーに対して思いとどまるよう繰り返し呼び掛けている。

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