「311 失われた街」展--東日本大震災で被災した14地域の復元模型と震災関連データで「街」への追悼を表現

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 一方、同時展示されている「311SCALE」でも、「客観性」が重要なキーワードになっている。「演出しない」「主張しない」「世界の人々にとって、わかりやすい表現を行う」「可能な限りの正確さを守る」の4点をコンセプトに、大震災によって受けた被害の大きさを、具体的なデータを使ってビジュアルに表現したものだ。

扱っているデータは、地震や余震の状況や大きさ、津波の規模、放射線放出量、電力の供給・使用量など。気象庁や文部科学省、東京電力が日々発表している公表データ情報を、地図上の地点ごとに棒グラフ化したり動画化したりすることで表現している。こちらは、原研哉氏が率いるデザイナー集団、日本デザインセンターの若手によるプロジェクトで、今回の展覧会に先駆けてWeb上で公開されている(http://311scale.jp/)。



 「大地震や大津波が起こった国、放射能汚染を引き起こした国としては、国内に向けてだけでなく、世界に向けてその状況を正確に発信することが大事ではないかと考えた。データの入力・更新作業という慎ましさをもって向かうデータ表現が、今回の模型づくりと共通するところがある。声高な主張のないところから、見る方に何かを感じてもらえるのではないか」と原氏。

作者の「主張」や「オリジナリティ」が主体となるのが展覧会の通常の姿だとすれば、今回の企画はある意味でその対極にあるものともいえるだろう。

「被災地では復興の兆しが見えたといっても、震災被害はまだ現実の問題。そういう意味でも、非常にデリケートな展覧会だと思う。実際に見てみると、模型制作という地道な作業を通じた学生たちの鎮魂のメッセージが伝わってくる気がする。建築関係者だけでなく一般の方々、また被災地に足を運ぶことが難しい高齢者や子供まで、できるだけ幅広い人に見ていただきたい」と内藤氏は言う。

(勝木 奈美子 =東洋経済オンライン)

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