日本円は、本当に「安全通貨」と言えるか 世界最大級FX会社幹部が見た「円の問題点」

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2008年のリーマンショック後は世界的に超低金利政策が取られるなか、米国をはじめとして株価が上昇。グローバルマーケット全体にリスクオンのムードが広まったことで、円キャリートレードが活発化、円安が加速した。

しかし、「リスクオン」の状態が、このまま続く保証はどこにもない。ギリシャ問題は小康状態ながらも、同国の財政破綻リスクは依然として燻っている。また、中国のバブル崩壊懸念も現実味を帯びている。実際、8月に入って、中国は3日連続で通貨切り下げを実施、マーケットはリスクオフになり、円は一時乱高下した。

10年、15年先まで円の安全性は確保されるのか

「現状では、円は安全通貨と見なされていますが、これは日本の金融環境、経済情勢の一貫性が、他の国に比べて際立っているからです。言い方を換えれば、何も変わらないということです。政権交代が起こっても、金融緩和政策は一貫性を維持しています。これは世界的に見ると稀有なことです。たとえばロシアでは急に政策金利の引き上げが行われた結果、ルーブルの暴落につながりました。通貨にとって大事なのは、地政学リスクよりも、その国の金融政策の一貫性です。この一貫性が維持されている限り、円は将来も安全であると考えやすい。そのため、グローバルマーケットを揺るがすような事件が起きると、円を持つのが安心という連想が働きやすいのです」。

だが、円には不安要素もある。

「円の懸念材料は政府の債務残高が非常に大きいことです。近年行われている量的金融緩和は、他国から見るとお札を刷ってばらまいているかのようにも見える。金融政策や経済情勢の一貫性によって安定しているかのように見える円ですが、政府債務の残高を見ると、安全通貨としての立場が今後10年、15年先まで維持されるかと言われれば、それは何とも言えないとしか答えられません」。

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