証券市況の低迷長期化で野村HLDの12年3月期、13年3月期東経予想を減額、不採算の欧州リストラ断行で背水の陣

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 全体の収益の足を最も引っ張っているのがホールセール(法人)部門だ。2Qの税前利益は731億円もの赤字を計上(1Qは149億円の赤字)。特に、トレーディング業務がCMBS(商業用不動産担保ローン証券)などの証券化商品や、CB(転換社債)、デリバティブの不振で486億円の赤字となった。

柴田拓美COOは、「プロップ(自己勘定取引)でバクチをやって損を出したわけではない。市況悪化によって、対顧客取引用の商品在庫の価値が低下したり、ファシリテーショントレード(顧客の委託注文を補完する自己勘定取引)のコストがかさんだりしたことが大きい」と説明している。

トレーディング業務に加え、株式・債券引き受けやM&A仲介を行うインベストメントバンキング業務も、2Qは245億円の赤字。債券引き受け業務やM&A仲介業務は堅調だったものの、収益性の高い株式引き受け業務が不振だったことが響いた。

下期のホールセール部門についても、トレーディング業務を中心にトップライン(収入)は大きな改善が見込めそうにない。世界的に不透明な市場情勢の下で、投資家の多くが証券取引に消極的となり、キャッシュポジションを高めている。

「顧客の取引量が少ない時に、自ら思い切ってポジションを取ってプロップデスク(自己勘定取引専門部隊)のようにやる方法もあるが、われわれは格好が悪いが我慢して、リスクの絞り込みをしている」と柴田COOは言う。リスクを絞り込めば、大きな損失は回避される反面、収益は伸び悩む。実際、9月末現在のバリュー・アット・リスクは52億円で、2010年3月末の126億円の半分以下となっている。

下期には新規公開や増資の引き受け案件が多少増える可能性があるほか、円高局面をとらえた日本企業の対外M&Aも高水準が続く公算がある。また、プライベート・エクイティ業務において、10~12月期(第3四半期、3Q)にすかいらーくの譲渡益(推定で数百億円)が計上される予定だ。

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