復興に動き出した石巻漁港、難問抱えつつも第3次補正予算で薄明かり

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復興に動き出した石巻漁港、難問抱えつつも第3次補正予算で薄明かり

全国第5位の水揚げ量(2010年)を誇っていた宮城県石巻漁港で、操業を再開した水産加工会社から機械の音が聞こえるようになってきた。

漁港の西側に位置する千田商店は復旧にこぎ着けた数少ない企業の1つ。津波で工場の建物は大きな被害を受けたものの、鉄骨鉄筋コンクリート造りの建物は完成して2年しか経っていなかったために、建物の躯体は何とか持ちこたえた。
 
 7月に完成予定だった冷蔵庫は震災後に新たに造り直し、2カ月遅れて完成。9月26日から切り身などの生産を再開した。

同社の佐々木恭取締役は「被害が大きかった企業の中では最も早く再開できた。石巻魚市場が立地する地区と比べて、造成時から地盤が高かったことが幸いした」と語る。

津波で大打撃を受けた石巻魚市場は、仮設のテントを設置して7月12日に生魚の出荷を開始。11月には仮設の荷さばき場2棟が完成した。

 ただ、本格復旧にはいくつものハードルが待ち構えている。石巻魚市場の須能邦雄社長(石巻市水産復興会議副代表、右写真)は、「水揚げは震災前の15~20%程度。これからも急には増えない」と指摘する。
 
 というのも、石巻漁港に水揚げされた魚の7~8割は冷凍保管したうえでシーズン以外に加工されていたため、水産加工会社や冷凍冷蔵倉庫、ミール工場などの復旧が本格再建の必要条件であるからだ。しかし、大半の企業は現在も操業を休止したままである。

復旧作業が遅れている原因の1つが、深刻な地盤沈下だ。加工会社の多くは漁港の後背地に立地しており、津波の被害をまともに受けた。そのうえ地盤沈下が著しく、満潮時には冠水する(タイトル横写真)。

漁港内の道路は盛り土によってカサ上げされているものの、企業の所有地の多くは手つかずのままだ。



■道路のカサ上げ工事は進んでいるが、工場の敷地はこれから

原因の2つ目は、被害があまりにも大きすぎる反面で、復旧に必要な予算確保が大幅に遅れたことだ。水産庁による第1次、第2次補正予算では建物の再建に必要な予算は盛り込まれておらず、中小企業庁の補助金も受けることができなかった。

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