漂流するJVCケンウッド、止まらない縮小均衡

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当初、ビクター社員のプライドは高く、社内の軋轢は大きかった。統合から半年後、構造改革をめぐって河原と衝突したホールディングス社長の佐藤国彦(前日本ビクター社長)が退任に追い込まれた。

しかし09年に、ビクター側の発言力が一気に低下する出来事が起こる。欧州子会社で、過年度にわたる不正会計問題が発覚したのだ。東京証券取引所から監理銘柄に指定され、ホールディングスは窮地に陥った。「皮肉にも、これがリストラの神風となった」(元社員)。

「鉛筆1本買うのも気が引けた」。グループでビクターの肩身は狭くなった。ビクター社長だった吉田秀俊は引責辞任し、河原体制に異を唱えるような幹部は大半が会社を去っていった。昨年は、川崎のビクター本社工場も売却された。

「これが最後」と昨年11月に発表したリストラは、勤続5年以上で500人と幅広い層が対象になった。そのわずか1カ月後には追加リストラが発表され、幹部にノルマが課せられる。評価の高くない社員が呼び出され、「辞めたくないと言っても、お前にそんな権限はない」と退職を強要されたケースもあったという。結局、今年3月末に7
38人がビクターを去り、うち500人が技術者だった。

1990年代から続いていた深刻な業績悪化からの脱却は、生え抜き社長も、松下電器から送り込まれた社長も成し遂げられなかった。だが、河原はわずか3年で、ビクターの業績を改善してみせた。テレビ事業からの完全撤退を決め、ビデオカメラなどの事業を縮小し、資産売却を進めて黒字化へとこぎ着けた。

当然、犠牲も伴った。典型例がビデオカメラ事業部だ。ビクターが高いシェアを握る分野だが、近年はスマートフォンやデジタルカメラの動画撮影機能に押されて業績は悪化していた。その開発部隊を3分の1程度に絞り込んだ。同事業の技師長は、部下を引き連れて大手カメラメーカーに転職した。高画質な一眼レフカメラの動画機能こそが、ビデオカメラを脅かしている。そのライバルに“塩”を送る結果となった。


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