消えたビットコイン、賠償請求はできるのか ハッキングだとしても「役員の責任が問える」

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「ビットコインの流出被害をどう考えるかという点について、議論は分かれるところです。

しかし、最終的には通貨に換算して決済するシステムのようですから、損害額を算定して賠償を請求することは可能だと思います」

仮に「ハッキング」のせいだったとしても、損害賠償請求できるのか。

「ハッキングを容易に許してしまうような、システム管理上の問題があったとすると、カルプレス氏がそのことを認識していながら放置していたという事情があれば、仮にハッキングを受けた場合でも、役員としての責任を免れず、損害賠償請求が認められる可能性があると思います。

問題は、そのようなシステム上の問題があったといえるかどうかでしょうね」

因果関係の証明がハードルに

「個別の顧客が、カルプレス氏に対して直接、損害賠償を求める場合には、『カルプレス氏の行為によって自分のビットコインが消失し、被害を受けた』という因果関係を証明する必要があります。

ただ、カルプレス氏がどういうことをしていたのか、その証明は、通常は容易ではないでしょう。警察の捜査による事案の解明が期待されます。

また、ビットコインについては、所有権としての引き渡しの対象にならないという判決が8月5日、東京地裁で出ました。

判決の詳細はまだ確認していませんが、損害賠償を請求するにしても、『ビットコインそのもの』の引き渡しを認めなかった今回の判決がどこまで影響するのか、今後注目するべきポイントでしょう」

桑原 義浩(くわはら・よしひろ)弁護士
日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長(金融サービス部会、違法収益吐き出し部会)、九州弁護士連合会消費者問題連絡協議会副委員長、福岡県弁護士会消費者委員会、民事手続委員会等。全国証券問題研究会、全国先物取引被害研究会などに多数参加している。
事務所名:弁護士法人しらぬひ柳川事務所

 

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