原油価格、「1バレル30ドル時代」が来る イランの制裁解除はシェール革命に匹敵

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イランのザンギャネ石油相は、「経済制裁が解除されれば、約半年で日量100万バレルの原油増産が可能である」と述べています。100万バレルといえば、アメリカ、中国に次いで、世界で3番目に多く石油を輸入している日本が1日に消費する量の20%強に相当します。 現状の生産設備でそれだけ余裕があるのですから、外資が入ってきて生産設備を更新したら、大幅な増産が可能になります。

イランは2020年までに原油生産量を日量500万バレルに引き上げる計画と伝えられます。そのためには海外への販路の確立と外国企業による巨額の投資が必要不可欠となりますが、アメリカとの和解が成功すれば、それも達成できる可能性が高まっていくでしょう。

経済制裁により開発が遅れているイランというフロンティアに対して、欧州はもちろん、アメリカの石油メジャーから中国、韓国の石油企業までもが進出しようとしています。

原油価格は、1バレル30~40ドル台で安定も

埋蔵量そのものがアメリカの3倍以上と豊富で、しかもイランの場合はシェールオイルではなく生産コストが安い在来型の油田ですから、開発事業者にとってそれだけ利幅が期待できるのです。10年~20年先の話になるかもしれませんが、生産力をいまのアメリカと同等の日量900万~1000万バレルのレベルに引き上げることも十分に可能となるでしょう。

アメリカで起こったシェール革命に続いて、イランの原油生産と輸出が徐々に増加していけば、当然のことながら、長期的な原油価格の形成に大きな影響を及ぼすことになります。イランが計画通り2020年までに日量500万バレルの生産が達成できれば、その頃には世界の原油価格は1バレル30ドル~40ドル程度がスタンダードになっているのかもしれません。

なお、エネルギー価格が長期的に低迷するもうひとつの理由については、私のブログ『経済を読む』でも述べていますので、興味がございましたらご覧いただければ幸いです。

中原 圭介 経営コンサルタント、経済アナリスト

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なかはら けいすけ / Keisuke Nakahara

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。
主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『日本の国難』『お金の神様』(ともに講談社)、『ビジネスで使える経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点から日本の将来を考える』を好評連載中。公式サイトはこちら

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