自民党を襲い続ける「北の逆風」は侮れない 山形市、岩手県の首長選も厳しそう

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近藤氏ら民主党に加え、共産、社民、生活が推薦する梅津庸成氏は地元の名門である山形東高校出身。吉村美栄子同県知事も参加の「オール山形」を標榜し、自民党が推薦する函館出身の佐藤孝弘氏との差異を強調する。これに対して佐藤氏側は、前回の市長選で敗北した後の4年間、遠藤利明五輪担当大臣の秘書として山形1区を固め、山形市内各地に遠藤氏との2連ポスターを貼って浸透を図ってきた。

そのような佐藤氏に近藤氏は、「佐藤氏には父親が山形大学出身であるということ以外に山形市とは接点がなかったが、あなどれない。1区のうち70%は山形市だが、2014年の衆院選で自民党は9万8508票も獲得したが、民主党はその半分も及んでいない」と警戒心を緩めない。

梅津陣営側は国民の多くが安保関連法制に批判的であることに注目し、大学時代の恩師である小林節慶應大学名誉教授との2連ポスターを作成。近藤氏は「梅津氏は元防衛省官僚だが、最後のポストは外務省の軍縮不拡散・科学部の生物・化学兵器禁止条約室長だ。集団的自衛権に反対する小林教授と共に、平和を求めるというメッセージを伝えたい」と述べるとともに、「7月には10ポイントリードされていたが、いまは5ポイント以内まで迫っている感触だ。2007年参院選での“逆転の夏”の再来を期している」と、いっそうの意欲を燃やしている。

岩手県知事選も自民党にとって鬼門

8月20日告示9月6日投開票の岩手県知事選も、自民党にとって鬼門だった。8月7日に自民党推薦で出馬するはずだった平野達男参院議員が正式に不出馬を表明し、自民党が「不戦敗」になったことは、ダメージを最小限にとどめる策だと言われている。それ以前でも、すでに平野氏の劣勢は確実視されていた。4月14日に出馬表明したものの、一向に参院議員を辞さないことで「出馬とりやめか」との憶測を呼んだ。平野氏はとりあえず7月30日に盛岡市内に後援会事務所を開設したが、その水面下では「平野降ろし」が進められていた。

平野氏の不出馬が決定したのは8月5日だ。この日、安倍晋三首相は午前10時に二階総務会長と面談し、平野氏を擁立した二階氏に出馬断念を促している。また自民党本部では、茂木敏充選対本部長が鈴木俊一自民党岩手県連会長と会い、不出馬の最終的な確認をしている。

「茂木氏は11日から盛岡市に入り、選挙協力を要請していたゼネコンなどに謝罪する予定だ」。後始末のスケジュールまで決められていたと、関係者は述べる。

このように自民党を追い込みつつある山形市長選と自民党を追い込むのに成功した岩手県知事選。実はそのいずれも、共産党の躍進の影響が見てとれる。

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