綱渡りのLNG調達、相次ぐ原発停止で需要が急増

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日本の7倍以上もの天然ガスを消費する米国では、それまで、国内に有する既存のガス田の生産量が年々減少。米国政府は将来的に不足分を海外からのLNG調達で賄う構想を描いていた。その矢先に起きたシェールガス革命によって、LNG輸入に頼る必要がなくなった。

当てが外れたのが、世界最大のLNG輸出国・カタールだ。同国は長期的なLNGの需要拡大を見越して、大規模な液化施設の建設を推し進めていた。が、期待していた米国の需要が消えたため、余った分が日本に振り向けられたのだ。

しかし、今後も安定的にLNGを確保できるとの楽観はできない。

LNGは、日本では冷房用の電力需要が膨らむ夏季が需要期だが、暖房用途が中心の韓国や欧州では冬季がLNGの最需要期。世界的な寒波に見舞われれば、今冬にもスポットの需給は一気に逼迫する。

さらに、中国やインドなど新興国でもLNGの需要は増加している。あるガス専門の調査機関の予測によると、世界のLNG貿易量は、11年に2億4000万トンを超え、12年には2億6000万トンに達する。一方、豪州を中心とする新規プロジェクトが供給を開始するのは早くとも14年後半以降。「今後2~3年は需給が逼迫気味に推移するだろう」と、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の坂本茂樹石油部長は見る。

開発中の新規プロジェクトの生産が始まれば電力会社のLNG調達は一挙に楽になるようにも思えるが、事はそう単純ではない。というのも、石油と違って、LNGは基本的に「受注生産型」のエネルギー。開発段階に入っているプロジェクトは、すでに長期の大口購入先と購入量が確定済み。供給量が増えるとはいっても、長期契約による事前の注文なしには簡単に買えないのだ。

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