太陽光、「九電ショック後」の生き残り策は? 電池各社が2つの戦略で激突

拡大
縮小

昭和シェル石油の100%子会社で、宮崎に国内最大規模の国富工場(生産能力900MW)を持つソーラーフロンティア。同社は住宅向け、システム化の流れに対応しつつ、国内の新規需要減少を見据え、海外需要の取り込みにも注力する。FIT導入後は内需に傾斜し、昨年は販売のほぼ100%が国内向けだったが、今年は海外向けを3割まで増やす方針だ。

特に注力しているのが、自社で案件を開発した後、投資家などに売却するビジネスモデルである。国内で培った知見を基に、今年から米国で事業を展開。自社製品の太陽電池モジュールを使った発電所を開発し、電力会社やファンドに売却していく。「米国では再生可能エネルギーの比率向上を義務化するRPS法がすでに22州で成立しており、追い風が吹いている。中南米やトルコ、英国などでも需要が強い」と、同社の嶽間澤英樹・コーポレートコミュニケーション部部長は話す。

5年後の世界需要は1.8倍増とも

世界全体の太陽電池の需要は、現状の年間40GW程度から、2020年には約1.8倍の70GWへ拡大するとの予測もある。2018年ころには海外で太陽電池モジュールの大工場を建設し、国内1GW、海外1GWの生産体制構築をもくろむ。ただ、海外市場は国内以上に競争が激しい。親会社が出光興産との経営統合に合意したばかりでもあり、最終的な投資判断に不透明感が漂うのも事実だ。

このように太陽電池メーカー各社は、メガソーラー建設ブームの終焉、内需縮小という転機に直面し、新たな生き残り策の模索を始めている。「システム化」という大きな潮流を考えると、提携を含めた総合的な技術力、コスト競争力がますます問われる。トップ企業といえども、戦略を誤れば、短期間のうちに没落、破綻しかねないのがこの業界。大手といえどもこれから本当の正念場を迎えることになる。

(文中、浅野晃弘氏の「浅」は正しくは旧字体です。)

中村 稔 東洋経済 編集委員
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