アングル:「メイド・イン・チャイナ」支える違法外国人労働者

働き場所を求めてベトナム人が中国に密入国

 8月6日、中国南部の工場数カ所を訪れたところ、ベトナム人違法労働者の受け入れが拡大し、当局も往々にして見て見ぬふりをしていることが分かった。上海で2013年8月撮影(2015年 ロイター/Aly Song)

[東興(中国) 6日 ロイター] - 中国とベトナムの国境を流れる川。ベトナム側から懐中電灯の合図に先導されたボートが中国側にたどり着くと、乗っていた集団は一斉にぬかるんだ土手をはい上がる。待っていた男らのバイクに飛び乗ると、闇夜に消えて行った──。

ベトナムと接する中国の東興で見られた昨夏の光景は、ベトナム人の違法労働者が中国に密入国する様子だ。こうして中国にやってきた違法労働者は、「世界の工場」と称される700キロ離れた広東省に向かう。

ロイターが中国南部の工場数カ所を訪れたところ、ベトナム人違法労働者の受け入れが拡大し、当局も往々にして見て見ぬふりをしていることが分かった。これらの地域ではミャンマーやラオスからの労働者も確認された。

雇用主はこうした違法労働者に偽のIDカードを渡し、時には当局の目に触れさせないよう、彼らを工場内の宿舎に閉じ込めることもある。

中国にいる労働者やブローカーによると、「蛇頭」として知られる中国の密入国あっせん組織がベトナムの暴力団と組み、こうした活動を管理しているという。労働者の月収から最大で500元(80ドル)をピンハネするほか、工場のオーナーからも手数料を徴収することで利益を得ている。

ベトナム外務省のファム・トゥ・ハン副報道官は、「複雑な地形」を持つ長い(中国との)国境を越える違法出国者の数はここ数年増えており、両国政府の頭を悩ませていると指摘。具体的な違法出国者数は把握していないとした。

中国外務省の報道官はコメントを拒否し、その他の政府部門に尋ねるよう要求した。

公安省および広東省の公安当局にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

<高齢化や賃金上昇が背景>

中国への違法労働者の流入拡大は同国経済が転換点を迎えたことを示している。これまでは安い賃金で働く豊富な国内労働力が中国の輸出を支えてきたが、高齢化に伴う労働力人口の縮小や賃金の上昇で、人材を確保したり、価格競争力を維持したりするのが困難なことを浮き彫りにした格好だ。

工場オーナーはこのため、賃金の高い沿岸部から内陸部、ベトナムやカンボジアといった近隣国に生産拠点を移すか、蛇頭やブローカーに金銭を支払い、コストがかからない外国人労働者を密入国させるかという選択に直面している。

中国では違法外国人労働者に関する公式データは公表されていないが、ある中国人ブローカーは輸出関連工場が集まる広東省東莞市だけで「少なくとも3万人いる」と見込んでいる。

政府系英字紙のチャイナ・デーリーが4月に報じたところによると、広東省当局は昨年、違法外国人労働者に関する案件を少なくとも5000件調査したという。

<偽のIDカード>

中国メディアによると、違法労働者を採用した場合、雇用主は1万元(1600ドル)以上の罰金を科せられる。

アクリル関連製品などつくる工場を経営する「リー氏」とのみ名乗った男性は、従業員約600人のうち、約80人がベトナム人とミャンマー人だと明かした上で、当局の取り締まりには常に気を使っていると話す。

リー氏は自身の工場が特定されないことを条件に「ベトナム人労働者は全員、偽のIDカードを携帯している」と述べた。

中国では、肉体労働で外国人が就労ビザを得られることはほとんどない。東莞の工場経営者2人によると、労働者は偽の中国人名とともに偽のIDカードを渡されるほか、警察当局による職務質問を受けた際の受け答えも指南されるという。見逃してもらうために金銭を地元当局者に支払うこともある。

東莞で偽のIDカードをつくっているという男性はロイターの電話取材に対し、ミャンマー人やベトナム人の違法労働者向けにサービスを提供していると説明。必要なのは偽の名前と労働者の写真だけで、通常の費用は100元前後だという。

<「稼ぐのに最高の場所」>

南シナ海の領有権をめぐって中国とベトナムの間で対立があるものの、ベトナム人労働者が中国に向かおうとする意欲に衰えはみられない。

東興を昨年訪れた際には、ベトナム人労働者の小さな集団が中国側で3メートルの境界フェンスを建設していた。

密入国したというンゴック・ドゥク氏(30)によると、フェンスの溶接作業をやれば中国では1日100元(16ドル)稼ぐことができる一方、ベトナムでは1日に約20万ドン(9ドル)にしかならないという。

同氏は中国当局に捉えられることを恐れているかとの問いに「お金を稼ぐのに中国は最高の場所だ。ベトナム人はどんどんやって来るだろう」と語った。

(James Pomfret記者 執筆協力:Nguyen Mai in Hanoi, Viola Zhou in Hong Kong and Ben Blanchard in Beijing 翻訳編集:川上健一 加藤京子)

*写真を追加して再送します。

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