人脈の狭い野田首相は「無力政治」を打破できるか

人脈の狭い野田首相は「無力政治」を打破できるか

塩田潮

 「無力政治」を慨嘆する声が強い。横たわる危機、未解決の課題や懸案をすべて「政治が片付ける問題」と位置づけ、克服できないのは無力政治のため、と説くのは、一種の政治万能論で、幻想というべきだが、それにしても「無力な日本政治」の罪と害は深刻だ。

 大きく捉えると、1990年代以降の長期経済低迷、少子・高齢化社会と財政悪化、国際化と諸外国との競争激化、官僚機構の失敗などに対して、政治が対応力を欠いていたのが原因だが、2007年7月以降の衆参ねじれによる停滞が大きい。

 安倍首相以後、4年3カ月で首相はすでに6人目だが、とくにねじれ再現後の菅内閣は、与野党対決と民主党の内紛に加え、首相の思いつきと暴走が災いして問題は先送りとなり、無力政治をさらけ出した。

 野田首相はねじれと与党内対立と財源難の3つが無力政治の病根と見たのだろう。対野党の低姿勢、与党内融和、財務省との二人三脚でスタートを切った。

 だが、ねじれの壁は高い。融和路線には優柔不断型の安全運転政治、財務省との抱き合いには官僚主導容認という批判がつきまとう。内閣支持率はまだ高水準だが、この先、下降し始めると、ここまでの野田流がすべて裏目に出て、菅政権と同様、八方塞がりに陥る危険性がある。

 安倍内閣以後、各首相は、社会や経済の将来像、実現のための青写真など、大きなビジョンを示せず、当面の課題の解決に追われ、政権担当能力の欠如から課題の処理もできなかったため、無力政治と呼ばれた。ビジョンの提示には、英知を結集するための幅広いネットワークという装置と、首相自身の「長い耳」が不可欠だが、各首相とも、それが欠けていた面がある。

 野田首相は、過去の主張や路線にこだわらず、現実的に対応するリアリストという隠れた顔を持つが、それだけでなく、英知結集の装置と「長い耳」が備わっているかどうか。

 「出しゃばらずに黙々と」というのが若い頃からの生き方のようだが、その裏返しで、野田首相は「人脈の狭さ」が弱点という指摘もある。「無力政治」の打破にはその克服が必要だが、そんな悠長なことを言っていられるかどうか。

(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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