コンビニ弁当を救った「おかず入れ」の秘密 意地でも「よそとちゃうことせなあかん」

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木村アルミ箔の木村社長

これは、伝統ということにも当てはまります。伝統を大切にしているように見えて、残っているところは、少しずつ何かを変えています。

その根本にあるのは、人と同じことしとったら生き残れない、という大阪人の発想です。そうでなければ、価格競争に巻き込まれます。昔のメーカーの競争は、品質だったり、納期だったり、サービスだったり、そこで争っていました。

それで最後の最後に、価格だったんです。それが今は、最初から価格を出します。これは、よそとちゃうこと、の考えではありません。少しでも安いとなれば、大資本が勝つわけです。だから、関西の商人はよそとちゃうことしないといけないんです。船場はもともと中小企業の町です。そういう商売をしないと大企業に伍していけません。

「よそとちゃうことせなあかん」の神髄とは?

最後のおまけです。私が以前取材した電気屋さんは、日本橋(大阪)より2割も高いパソコンを平気で売っています。日本橋は、関西人なら皆知っている、秋葉原に匹敵する大阪の電気街です。「あんたら、安いパソコンなら日本橋へ行ったらいいわ。だけど、うちのパソコン買ったら、一生面倒見たげるよ」と言って、自分の携帯番号を渡します。そうすると、お客は2割高くても、納得して買うそうです。困ったら携帯をかければ、いつでも来てくれる。これは究極のサービスです。まさに「ひととちゃうことせなあかん」です。だから、2割高くても売れるんです。

このおっちゃん、夕飯を食べている時に携帯が鳴ります。そうすると、箸を置いて、パソコンを直しに行きます。そこに、この電気屋さんの意地と努力があるわけです。普通の電気屋さんみたいに、時間外だから、と留守番電話にしないわけです。かかりつけのパソコン・ドクターです。これだけのサービスが付いているんだから、高く売って当然、というプライドでもあるわけです。このプライドが「よそとちゃうことせなあかん」の神髄だと思います。

1円安い商売をやめて、1円高い商売をしませんか。それには、「よととちゃうことせなあかん」のです。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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