仮設住宅の住環境格差、寒さ対策を怠った宮城県、実施ゼロ%が並ぶ理由

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 そもそも宮城県内の仮設住宅のほとんどで玄関網戸が設置されていないのは、県がプレハブ建築協会との間で取り決めた仮設住宅の仕様に玄関網戸の設置を含めていなかったためだ。その結果、当初から仕様に盛り込んでいた福島県で玄関網戸の設置が72・1%に達しているのに対して宮城県ではわずか3・9%。県の取り組み方針の違いが、県民の住環境格差につながっている。

9月下旬に日本列島を直撃した大型台風15号は、被災地にも大きなつめ跡を残した。石巻市では市内の至る所が冠水し、仮設住宅でも住民は暴風雨に悩まされた。

289世帯が入居していた石巻市の仮設住宅大橋団地では、敷地内に水がたまった(写真)。団地内には水を流す側溝がないため、自然に乾くのを待つしかなかった。

湿気対策も大きな問題になっていた。大橋団地住民の山崎信哉さん(75)は「室内では結露がひどく、乾いたタオルもびっしょりになった」と語った。石巻市の飯野川北高校グラウンド仮設住宅で暮らす鈴木しく子さん(63)は、「風除室がないので、玄関に風雨が吹き込む」と嘆いた。

石巻市雄勝町名振の仮設住宅に住む大和久男さん(56)は、「地面からの湿気がひどく、布団も湿っぽい。棚の後ろの壁にはすでにカビが生えている」と打ち明ける。

自治会結成遅れる石巻市

仮設住宅についてはハード面での整備が急がれているのとともに、自治会の組織化や集会所の活用など、ソフト面での取り組みも急務だ。しかし、ここでも格差は大きい。10月6日の参議院・東日本大震災復興特別委員会で、牧義夫厚生労働副大臣は、同日現在で被災3県にある890の仮設住宅団地のうち418で自治会が存在することを明らかにした。

ところが、石巻市の場合、市内131カ所の仮設住宅団地のうち、10月3日時点で結成済みはわずか3カ所、準備中も20カ所にとどまっている。

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