「官製ベア」をやっても賃金が上がらない理由 格差は拡大し生活は苦しくなっている

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昨年同様に10月に追加緩和が行われるのか(写真は2014年10月31日、撮影:尾形文繁)

景気・物価ともに下振れで10月にも追加緩和

――2年で2%どころかそれ以上の時間が経ちましたが、5月、6月のコア消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は前年比0.1%のプラスにとどまっています

先ほど話したように、需給ギャップが縮まって物価が上昇していくという関係が成立していないし、期待インフレ率も上がっていない。円安に依存した物価上昇はむしろ景気を悪化させる。

――当面の物価の先行きと日銀の金融政策をどう予想していますか。

物価は上がらなそうだ。足元で再び原油価格がWTIで1バレル50ドルを割り、ドバイ原油も50ドル前半と下がっている。ガソリン価格が下がり、貿易統計から予測した電気料金や都市ガスの価格も下がる方向にある。日本銀行は「展望レポート」の7月中間評価で、ドバイ原油の価格が70ドルに戻ることを前提に、10月以降は物価が上昇方向に向かうとしているが、そうしたシナリオが崩れる。景気、物価ともに不調となれば、言い訳できないので、今年10月に追加緩和を実施するだろう。

――上野さんは、2%の物価目標の達成は難しいにもかかわらず、日本銀行がその旗を降ろすことはない、という見方ですね。

本当に不毛な政策で、早くやめてほしいとは思っているが、日銀のレジームチェンジを主導したのは安倍首相であり、安倍さんが首相に在任している間、おそらく東京オリンピックが開催される2020年まで自民党総裁任期が延長されて、引っ張るのではないかと見ている。安倍政権の支持率が下がってきており、これはシナリオが変わるかどうかのひとつの節目ではある。だが、代わりになる人材が自民党内にも野党にも見当たらないので、支持率は黄色信号といわれる30%を割ることはないのではないか。 

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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