欧州投資家の不動産投資は、特定マーケットに絞った投資になる--米不動産サービス大手・ジョーンズ ラング ラサールのアジア太平洋地域の調査責任者に聞く

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住宅セクターでは状況が異なるかもしれない。政府がさまざまな(住宅市場の)クールダウンの措置をとっている。徐々に価格が下がっており、それに伴い、取引量も減少している。住宅市場はソフトランディングに向けて動き出している。

--今回の震災が日本の不動産市場に与えた影響は?

赤城:震災前に日本に投資を行っていたのは、安定運用を行っている、いわゆるコア投資家だった。しかし、その人たちこそ、突発的な地震や原発問題にセンシティブになったのが実態だ。

よって、いったん(不動産投資から)引いたのは事実だ。しかし、徐々に事態が見えてきて、日本市場の不透明感がなくなりつつある。海外投資家が日本を見る目も正常になりつつあるのが現段階だ。

実際、今年の第2四半期は、まったく滞ったと言ってもいいほどの不動産の取引量だった。第3四半期に入って、Jリートが取引を開始した。日本の国内資本が市況を戻し、それに伴って私募ファンドや海外投資家を含めた投資家が戻ってくる。日本経済の回復に伴い、来年以降に市場の正常化の動きが出てくると思う。

--海外の投資家から見て、日本の不動産市場の魅力は?

マレー:アジア太平洋地域で最大の投資市場であること、流動性が高く、取引もしやすい。さらに、規制や規則が頻繁に変わらない。投資家は規制環境に関して確実性を持って投資を行える。透明性は必ずしも非常に高くはないが、良くなっている。借り入れコストが安く、イールドスプレッドが高いのも魅力になっている。

--日本経済はこれから少子高齢化が進んでいく。

赤城:経済規模はいきなり半分になるわけではない。オフィスワーカーもすぐ半分になるわけではない。1人当たりのワーキングスペースは増える。ただ、確かに今後の経済規模にはインパクトがある。高齢者が増えるので、ヘルスケアや老人ホームなど、新たなセクターが広がる。パイとして、不動産のいろんな多様性が出てくることを今後期待している。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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