シャープが液晶で「提携宣言」、どこと組む? 再建シナリオは出足の第1四半期から暗雲

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シャープにとって液晶は全社の牽引役。その苦戦が一因で2014年度に2200億円を超える最終損失を計上して経営危機に陥ったものの、再起を懸けた2015年度からの新中計では、「変わらぬ事業柱」として位置づけていた。

中国におけるスマホ販売の減速について懸念を吐露した高橋社長

しかし、その液晶は第1四半期で営業赤字に。第2四半期に入り、事業環境はさらに悪化しているという。「6月末までは、それほど下振れしていない。しかし、それ以降がまずいなというのを今感じている」(高橋社長)。会社側は特に主戦場である中国のスマホ向けが低迷していると説明、同国で一部操業を停止していると明かした。

想定されていた液晶の苦戦

シャープの液晶事業の苦戦は、業界ではすでに想定されていた。競合のジャパンディスプレイが、中国でファーウェイやオッポといった少数の大手スマホメーカー向けに、ハイエンド品を提供しているのに対し、シャープは中国スマホメーカーの顧客数を、2014年度の15社から2015年度中に25社にまで広げようとしている。その結果、「利益率の低い中小スマホメーカー向けにも供給しており、採算悪化につながっているのではないか」(液晶パネルメーカー関係者)という声が出ていた。

シャープ側はスマホ向けの苦戦を、「第2四半期以降は、パソコン向けや車載向けなどでカバーしていく」と強調。6月末に月商比1.67カ月分(3月末時点では1.46カ月)にまで積みあがった在庫を、非スマホ分野でさばくと訴えたが、市場規模が比較的小さいパソコンや車載向けで、どこまで補えるかは不透明だ。

今後の焦点は、高橋社長が言及する他社とのアライアンスだ。相手はいったいどこなのか。断り続けた台湾の鴻海精密工業などだろうか。

シャープは今年10月にカンパニー制を導入し、液晶事業などの分社化への一歩を踏み出す。その後、同業や再生ファンドなど出資に応じてくれるパートナーが見つかれば、協力して投資を継続すると見られる。ただ、苦戦が続くシャープの液晶事業に対し、どの企業が出資に応じるかは不透明だ。

シャープは7月27日から3500人規模の希望退職を募集中。また決算を発表した31日には、不採算の北米でのテレビ生産から撤退するとも発表するなど、痛みを伴う改革も進めている。その上で課題の液晶事業に最適なパートナーを見つけることができるか。再建に向けて、シャープの視界はなかなか晴れない。

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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