「倒産の目利き」が読み解く"東芝問題"の真相 企業経営者が危険な一線を踏み越えるとき

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東芝の不正会計問題にみる、企業の問題点とは?
歴代経営者3人が辞任するというまさかの展開となった東芝の不正会計問題。一連の問題は、企業経営者が持つべき資質や、不正を許してしまう企業の問題点を浮き彫りにした。帝国データバンクの藤森徹・情報統括部長が、今回の東芝問題の教訓について分析する。
(聞き手:東洋経済オンライン編集部)

企業は人で決まる

――東芝の問題が世の中の注目を集めています。長年にわたって多くの伸びる企業、倒産企業を見てきた藤森さんは、この問題をどう分析しますか。

東芝問題でつくづく感じるのは「企業は人で決まる」ということです。われわれが日常的に取材をしている中小企業の会社の質は、経営者によって決定的に左右されます。

ダメになる会社の経営者は、いくつか共通するわなに陥っています。エクセレントでなかった東芝が、問題を起こした末に、「エクセレントカンパニーがしくじった」といった記述でメディアに紹介をされているのは、皮肉としか言いようがありません。

――東芝は、経営トップが主導して決算内容を操作し、数字の見栄えをよくしようとしましたが、なぜこうした誘惑に経営者は陥りやすいのでしょうか。

企業倒産は年間9000社ぐらい出ていますが、このうち少なく見積もっても2割、おおむね3~4割は黒字のまま潰れています。要するに、赤字を黒字と見せかけた粉飾決算です。よく多くの人が間違えるのですが、企業は粉飾決算をしたから潰れるのではなく、赤字で経営能力がない社長がいるから潰れるのです。赤字を黒字に見せかける粉飾決算をしてしまうことは、経営者にとって実は非常にハードルが低い。いとも簡単に乗り越えられてしまう誘惑なのです。

企業が粉飾決算や不正会計を行う動機は2つあります。赤字や債務超過状態なのを隠蔽、糊塗する目的がひとつです。大半の中小企業はこのパターンといえます。ごまかしをやらないと、銀行から融資が止められ、会社が潰れると考えるからです。建設業であれば公共工事の入札に参加できなくなり、企業の死活問題にかかわってきます。

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