円高是正を急がなければ中部地方の空洞化は加速する--中部経済連合会会長 三田敏雄

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 重要なのは、すぐに実行できないものであっても、しっかり期限を区切って目標を立てることだ。

政策というものは、一つ動かせば、必ずマイナス面も出てくる。全部100点とはならない。負の要素を補うような政策も考えてバランスを取る、ということが最終的な形になるわけで、政治としてその方向を示すことが必要だ。

消費税の引き上げについての議論を見ていても、いつ頃までに、というあいまいな期限の切り方は問題だ。明確に、「いつまで」と区切ってやっていく必要がある。東北の復興についても、いつまでに何をやるか、明確に示す。道路はいつまでにどこまで復旧する、港湾についてはいつまでに整備する、という時間軸のある筋道を立てないと安心できない。

今は円高で大変、ということがあっても、政策の筋道や優先順位が見えれば、それまではしばらく我慢しよう、という考えにもなる。だが、問題はそれが見えないことだ。

会社経営においても、どんな大変なときでも目標が明確に掲げられていれば、それに向かって我慢もできる。国民も同じだ。目標を明確に示すことは、政治の責任だと思う。苦しいことについてもしっかり言う。何も示さずに、皆さん頑張ってください、というのは通用しない。

野田首相にはじっくり考えてほしい。周りも政局的な話で足を引っ張るのではなく、じっくりやれるようにしてあげることが必要だ。

みた・としお
1946年愛知県出身。69年成蹊大学工学部機械工学科卒業、中部電力入社。2003年取締役、05年常務を経て、06年社長。10年から会長(現職)。11年5月に川口丈夫・中部電力相談役の後継として中経連会長に就任した。

(聞き手:山田俊浩、西村豪太 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2011年10月15日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

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