ワールドの「決断」を遅らせた創業家の体面 なぜリストラは2段階に分けられたのか

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社長就任後、上山氏が進めてきた「2段階」のリストラは、後から考えついたのではなく、あらかじめ練りに練ったうえで実行されている戦略とみて間違いないでしょう。

それにしても、早期退職でワールドを去るといわれる約500人の対象者にとっては、厳しい先行きとなりそうです。業界でも大手のワールドよりも条件の良い会社に移れる人は少数派で、会社の規模も収入も現状からのダウンする転職を迫られそうです。

40歳以上の転職はたやすくない

特に今回の対象となる40歳以上といえば、他業界での転職においてもたやすくない年齢です。まして、若々しい感性が求められるファッション業界においては、一説では27~28歳までがギリギリの転職適正年齢といわれています。今回の再就職先のあっせんを頼まれている人材紹介会社は、400人弱のあっせんが限度とすでに読み込んでいるようです。

関係者の証言によると、今回のワールドの早期退職者には、会社の思惑に乗った人物と会社がそれを望まない人物とでは退職の扱いが違うということもあるようだ。

今回の人員削減は、店舗での販売を担う子会社のワールドストアパートナーズの従業員などは対象外とされているようですが、これには疑問を感じてしまいます。500店近い規模の閉店となれば、1店舗あたり3人と見積もっても1500人の人員が余剰になりかねません。ワールドストアパートナーズには約1万4000人の従業員がいるようですが、このことについて、あえて触れられていないことが気になります。

ワールドの現役社員の中には、上山新社長が今回のリストラを終了したところで、創業家であり、筆頭株主でもある寺井前社長がまた返り咲くのではないかと読む向きもあるそうです。

華やかな世界、人を元気にできる、人に喜ばれる仕事として選んだファッション業界での仕事。先ず自分が元気でなければ、人を元気にできません。社員全員が元気でなければ、会社はもちろんのこと、お客も元気にできません。

ファッションの街、神戸を中心としたワールド。東京にいる筆者は学生時代に毎週土曜日のお昼、FM東京から流れてくる『グランドファッションのワールドがお贈りする、ワールド・オブ・エレガンス』という細川俊之さんナレーションの番組が好きでした。それを毎週聴き入っているうちにファッション業界に憧れ、この世界に足を踏み入れたようなものです。

きっと、今回の早期退職で対象となった中にも同様な人たちは大勢いることでしょう。ワールドにとっては、多大な犠牲を払う今回の大規模なリストラにより、再生を果たし、再び夢あふれるファッション業界を牽引する存在に返り咲くことが何よりも望まれます。

大ナギ 勝 ムービングオフィス代表

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おおなぎ まさる / Onagi Masaru

(株)ムービングオフィス代表取締役、一般財団法人ニッセンケン品質評価センター アドバイザー。杉野服飾大学非常勤講師。青山学院大学法学部卒業後、高級婦人服ブランドを日本一売る(株)レリアンに入社。営業部、企画部、バイヤー兼MDを経て、宣伝部へ。女優・天海祐希さんを起用した、同社では30年ぶりのTVCMでは制作担当責任者として、企業ブランドを新たに確立。その後、システム情報部の責任者も務める。2013年独立。著書として「商品よりも『あと味』を先に売りなさい」(日本実業之出版社)がある。http://www.movingoffice.jp/

 

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