【産業リサーチ】アルセロール・ミタル誕生の陰で動き始めた「次」。新日鉄もうわさの主役

注目されていた6月30日のアルセロールの株主総会。ロシア鉄鋼大手セルベリスタリとの合併計画が否決されたことで、世界最大手ミタル・スチールとアルセロールが合併するうえでの最大の障壁がついに消え去った。ミタルはアルセロールへのTOBの期限を7月12日まで延長、15日には結果が判明し、2007年半ばまでに粗鋼生産量で新日鉄の3倍の1億1000万トン、世界シェアで1割、世界に27の拠点を持つ巨大鉄鋼企業「アルセロール・ミタル」が誕生する。
 巷間、ミタルと米国で自動車用鋼板の合弁事業を手掛け、また欧州ではもう一方のアルセロールと自動車用鋼板で包括提携している新日鉄の動向に注目が集まっている。が、実はここに来てこれとはまったく違った形で新日鉄の動きが注視され始めた。ミタルとアルセロールの合併について、欧州委員会はすでに「一部の生産ラインを売却するという条件付きで承認する」と発表。買収が成立してもEU内の競争は著しく阻害されないとの判断を示した。ミタルはそれに従う意向を示している。が、問題は欧州ではない。これから合併審査に入る北米だ。ミタルは米国で経営破綻したLTVの資産を買収する形でISGを傘下に収め、その後ベスレヘム、ウェリントン、イスパット・インランドを次々と買収。残っているのは高炉のUSスチールとAKスチール、電炉のニューコアくらいのもの。カナダでは最大手のドファスコがすでにTOBによってアルセロールの傘下に入り、最大手のステルコは経営破綻で再建中。要は弱者乱立、事実上の寡占状態なのだ。だとすれば、米国独禁当局は欧州委員会ほどの甘い条件では合併を認めないだろう。合併には両社傘下の鉄鋼会社切り離しが不可避と見られており、それを新日鉄が買収するのではないかと一部で取りざたされているのだ。
 もうひとつの注目点は、アルセロールのホワイトナイトとなるはずが、はしごを外された形となったセベルスタリなど、ロシア勢の動きだ。ロシアはエネルギー産業だけでなく鉄鋼産業でも世界の中心に躍り出ようと計画しているとされる。袖にされたセベルスタリはアルセロールから約200億円の違約金を手に入れることで決着させた。セベルスタリは国内外と合わせるとロシア最大手だが、国内だけで見るとエブラス・グループがトップ企業。最近の報道では、セベルスタリのモルダショフ会長以上の大富豪で英国のプロサッカーチーム、チェルシーのオーナーであるロマン・アブラモビッチ氏がファンド経由で、このエブラス・グループの株式4割を取得したという。しかも半年くらい前から、エブラスグループによる英コーラス社の買収話が絶えない。これもコーラス社の大株主にロシアの別の大富豪が名を連ねているからといわれている。
 安売りのロシアと言われてきたロシアの鉄鋼企業。が、ここ数年の活況で一番儲けたのがロシアという説もある。ロシアメーカーは石炭も鉄鉱石も自前で所有するだけに、世界再編時の一大勢力になるのは間違いないだろう。
【山本隆行記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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