ドコモ、「9四半期ぶり増収増益」も喜べぬワケ 本当に減益基調に歯止めはかかったのか

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また、前出の契約純増数には、ドコモ本体の契約だけでなく、ドコモの通信網を借りて安価なサービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)の契約が多く含まれている。MVNO市場は既存の事業者に加えて、楽天やカルチュア・コンビニエンス・クラブなども本格参入するなど、かつてない盛り上がりを見せている。つまり、ドコモの自力だけで2倍の純増数となったわけではないのだ。

独自コンテンツサービスの集合体「dマーケット」など、ドコモが注力するスマートライフ領域(通信以外の分野)についても、足元の好調が年間を通して続くわけではない。確かに同領域は、通期の営業益計画が500億円のところ、子会社群の好調などにより、4~6月期は230億円を達成している。だが、「ポイント関連費用を下期に重く見ているので、足元の進捗率が高くなっている」(加藤社長)点に注意する必要がある。

こうした事情もあって、加藤社長は「(4~6月期は)コスト削減効果が強めに出たところもある。手応えを感じつつも、注視していきたい」としている。

7~9月期以降も単純比較は禁物

第2四半期についても注意すべきポイントがある(撮影:尾形文繁)

第2四半期(7~9月期)以降も、前年同期との単純比較では実態を見誤るかもしれない。

昨年度の7~9月期は、6月の新料金プラン導入によって約400億円の収益マイナス影響があった。最も安いデータ通信プラン(月額3500円)にユーザーが殺到したためだ。今年度はこの影響が薄れ、前年同期比では業績が改善する可能性が高い。

今後については、光回線とスマホのセット割引「ドコモ光」(41万件)を駆使してスマホの販売数を維持しつつ、タブレット端末を上積みできるか、また「dTV」(動画見放題サービス)、「dヒッツ」(音楽聴き放題サービス)、5月開始の「dグルメ」(料理レッスン動画やレシピ情報、クーポンなど)といった独自コンテンツでの会員獲得、さらには販促費用、ネットワーク設備を中心としたコスト削減の進捗状況なども、合わせてチェックする必要があろう。

業績悪化が続き、営業利益が2011年度の8744億円から昨年度は6390億円まで急降下したドコモ。ひとまず減益基調に歯止めがかかった格好だが、仮に今年度が計画通りに着地できたとしても、営業利益は6800億円の見通し。本格回復とするには、まだ程遠い水準だ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光、食品業界の担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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