「繰り上げ返済は早いほどよい」に異議あり 住宅ローンを「損得」だけで考えるな

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繰り上げ返済のシミュレーションとして、購入から5年後を例に挙げたのは根拠がある。ファイナンシャルプランナーとして筆者が受ける相談では、第1子を出産した妻が時短勤務で復帰する前後に住宅の購入を検討している、というケースが非常に多い。そういった家庭では、たいてい第2子の出産も検討している。

すると住宅の購入から1年後に妻が第2子を出産して、その1年後に時短勤務で復帰し、さらにその3年後にフルタイム勤務に復帰、というスケジュールが考えられる。この収支の波を乗り越えた5年後に、繰り上げ返済を検討しても致命的に遅いワケではない。それまでは貯金を増やすことだけを考えればいいだろう。

貯金が100万円多いか少ないかで、家計の安定度は大きく変わる。10万円の得をするための選択が、リスクを大きくすることもありえるのだ。

繰り上げ返済の「得」はいつ発生する?

もちろん、中には10万円の得をするなら多少無理をしてもよい、という人もいるだろう。ただ、大きく勘違いをしている場合もある。それは「繰り上げ返済は、行った時点で得をするわけではない」という点だ。

毎月の返済額が10.9万円ならば、10年間で返済する額は合計で1308万円だ。この間に100万円の繰り上げ返済をすれば、100万円がそのまま加算されて支払い総額は1408万円に増える。つまり繰り上げ返済をした分だけ手元から出ていくおカネが増える。

「得をするどころか支払い額が増えるなんておかしいのでは?」と思うかもしれないが、期間短縮型の繰り上げ返済による「得」は返済期間が短くなることによって発生する。購入1年後に100万円繰り上げ返済をしたケースでは、当初35年のローンは2年3カ月短縮され、32年9カ月で返済が終わる。

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