会計士VS.税理士--税務業務をめぐり激突

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近年は顧客企業から国際戦略や組織再編について税法的なアドバイスを求められることも多く、仮に会計士が税務業務を手掛けられなくなれば、「会社法に精通し、組織に詳しい人間がアドバイスできなくなる」(小見山副会長)。先進国の多くは、会計士が自動的に税務業務も行えるようになっており、海外の会計士と格差が生じる懸念もある。

もっとも今回、双方が税務業務に対して“執着”を見せる背景には、以前の税理士法改正時にはなかった問題が見え隠れする。

一つは不況による顧客の減少だ。大手監査法人では人員削減が行われ、税理士が得意とする中小企業の数も減少傾向にある。もう一つは03年の公認会計士法改正に伴う、会計士試験合格者の激増である。会計士の場合、試験合格後2年間の実務を経て初めて資格を取得できるが、昨年の合格者の多くが就職浪人になっており、会計士になれない合格者の問題も深刻化している。

現在の会計士のうち税理士登録をしているのは1割程度で、「今後も税理士会に迷惑をかけるほど増えることはない」(小見山副会長)と会計士協会は見る。が、税理士側からしてみれば、大手監査法人を辞めた会計士が、税務業務へ大量に流れてくる懸念がある。となれば、「顧客のパイが決まっている中で、飯の種が食い荒らされる、という脅威を持たざるをえない」(酒井教授)。

双方に譲る気配が見えない中、「受験者や合格者にそのシワ寄せが来ている」と酒井教授は問題視する。会計士試験の合格者が税理士になれず、就職もできない問題への対応は急務だ。

両者には顧客の要望や国際的な流れを見据えた建設的な議論が求められる。

(倉沢美左 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2011年10月8日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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