汗と涙の甲子園が、子どもの可能性を潰す 甲子園と陸上インターハイに「魔の共通点」

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サニブラウンは17歳以下で争われる世界ユース選手権で100mと200mのスプリント2冠を成し遂げた。200mではウサイン・ボルト(ジャマイカ)が保持していた大会記録を塗り替えて、北京世界選手権の参加標準記録も突破。その快挙は、某スポーツ紙の10面で大きく取り上げられた。だが、その日の1面トップは早稲田実業のスーパールーキー清宮幸太郎だった。西東京大会5回戦での活躍が大々的に報じられたのだ。

スポーツは結果がすべて。筆者はそう思う。清宮はまだ甲子園で1本のホームランも打っていないにもかかわらず、メディアの過剰報道で、はやくもヒーローになっている。これはちょっとおかしいのではないか? スター選手を求める「大人の都合」により、16歳の少年が“利用”されていると言ってもいいかもしれない。

高校生を「アスリート」という立場で見ると、非常に微妙な位置にいる。“商品価値”はあるものの、基本的に“おカネ”を稼ぐことができないからだ(一部のプロスポーツを除く)。甲子園と陸上インターハイを取り巻く環境についても、「大人の都合」に満ちている。そして、その悪しき環境が、高校生の“夢”と“可能性”を潰していると筆者は思う。

世界につながらない過密スケジュール

子どもたちにとってのメリットがほぼない、謎の「悪しき環境」が高校スポーツで横行していることについては、先に陸上インターハイの話をした方が理解しやすいだろう。

筆者は競技実施のスケジュールを改める必要があると思っている。たとえば男子400mは、大会初日の11時10分から予選、14時00分から準決勝、16時20分から決勝が行われる。夏の炎天下の中、1日に3本のレースをこなして、勝負を決めるというハードなものだ。これのどこがいけないのか? 選手の負担が大きいというのもあるが、そもそも世界にまったく通用しないやり方だからだ。

8月後半に開催される世界陸上北京大会の男子400mは、大会3日目の11時10分から予選、同4日目の20時05分から準決勝、中1日開けて、大会6日目の21時25分から決勝というスケジュール。4日間かけて3本のレースを行う。わずか5時間ほどの間に3本のレースをこなすインターハイとは求められる能力が変わってくる。

陸上の花形種目である100mも同様だ。インターハイの男子100mは、大会2日目の10時45分から予選、14時35分から準決勝、16時30分から決勝という1日3本のスケジュール(18時30分からは4×100mリレーの準決勝もある)。

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