大逆風のベネッセと学研を分析する 教育産業は2018年問題を乗り越えられるのか

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業績の見通しによると、やはり2016年3月期(平成28年3月期)は、さらに悪化する見込みです。今年4月には、会員数が25.8%減少(前年同月比)しました。例年、1〜5%の自然減があることを考えると、大きな落ち込みです。その結果、全体の売上高は0.9%減の4592億円、営業利益は53.8%減の135億円になると予想されています。

損益計算書に戻ります。深刻なのは、最終損益である当期純損益です。前の期は199億円の黒字を稼いでいましたが、平成27年3月期では107億円の赤字を計上しました。

この主な原因も、やはり個人情報流出事件によって発生した特別損失です。「情報セキュリティ対策費」として260億円が計上されていますね。情報が漏洩したお客さまへの謝罪費用200億円や情報セキュリティを強化するための費用など60億円が含まれています。

流出事件の影響は、峠を越えたのか 

これだけの損失があったわけですが、安全性に影響はないのでしょうか。貸借対照表から自己資本比率を計算しますと、39.2%と十分安全な水準です。短期的な安全性を示す流動比率も134%ありますから、こちらも高いと言えます。不祥事があったとはいえ、今のところ安全性に問題はありません。

今後のポイントは、2つあります。1つは、この事件の影響がいつまで続くのか。もう1つは、ほかの事業をどれだけ伸ばすことができるのか、ということです。

すでにベネッセは、加速する少子高齢化に向けて、事業構造を変えようとしています。「進研ゼミ依存」から脱却しようとしているのです。

同社は、進研ゼミによる収益比率を下げ、介護や海外事業の比率を上げようとしています。営業利益ベースでは、2011年度に進研ゼミの比率が63.5%ありましたが、2014年度には47.7%まで下げました。一方、シニア・介護事業(高齢者向けホームなど)は10.1%から13.1%へ。海外教育事業(中国や韓国での通信講座)は2.2%から9.5%まで引き上げられています。

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