イタリア、スペインへ…飛び火はどこまで? ソブリン危機“伝播”の確率

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 実際、融資枠拡大の前にクリアすべきハードルは多い。現状は、ギリシャの財政再建計画の狂いから、同国の1次支援の継続すら危ぶまれる状況。EFSFを使ったギリシャ2次支援も、フィンランドがギリシャに担保を要求するなど足並みの乱れが目立つ。

さらに、EFSFによる発行・流通市場を通じた国債買い入れや銀行の増資資金支援を可能にする機能強化策についても、各国の議会承認が10月以降にずれ込む見通し。EFSF融資はユーロ圏17カ国の“全会一致”が条件だけに、一国でも議会承認に失敗すれば、全体のスキームが瓦解してしまう。

ECB依存で時間稼ぎ 中国など新興国頼みも

「今の状況では、ギリシャのデフォルトは絶対に起こせない」と、田中理・第一生命経済研究所主任研究員は強調する。EFSFが未整備のままデフォルトとなれば、イタリアなどに危機が本格伝播しかねない。ECBが支えられる保証もない。

第二のリーマンショックを防ぐには、「危機先送りと言われようがギリシャ支援を続け、EFSFの拡充を早期に実現するしかない」(伊藤さゆり・ニッセイ基礎研究所主任研究員)。拡充されたEFSFにバトンを渡すまでは、ECBが危機伝播を何としても抑え込む。
 
 中国など新興国のマネーに頼るなど、なりふり構わぬ対応も必要かもしれない。そうして時間稼ぎをしている間に、問題国が財政・経済改革を進める。たとえ将来ギリシャがデフォルトとなっても、システミックリスクに発展しない状態に持っていけるかどうかだ。実現へのカギは、ユーロ圏各国の「政治力」が握っている。

(週刊東洋経済2011年10月1日号より)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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