イタリア、スペインへ…飛び火はどこまで? ソブリン危機“伝播”の確率

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 スペインは、フローの財政赤字が10年で9・2%、11年で6・3%と高いことが懸念材料。また、失業率が約20%と高く、「カハ」と呼ばれる地域金融機関の経営悪化問題を抱える。とはいえ、政府債務残高は11年予想で対GDP比68%程度。ドイツの84%、フランスの85%をも下回り、「優等生」といわれる。

それでも両国の国債が売られるのは、投資家の不安や投機的思惑が自己実現的に両国を市場から締め出しかねず、そうなった場合の投資家保護策、すなわちEUの金融支援に限界があるとみられているためだ。

市場調達が困難となった財政危機国を金融支援しているのが「欧州金融安定化基金(EFSF)」。その融資の原資を調達するEFSF債にはユーロ圏政府の保証が付されるが、低利発行の必要性からトリプルAの格付け取得が求められ、そのためにはトリプルA格を持つ国の保証のみが必要。


 
 だが、ユーロ圏でトリプルA格は独、仏、蘭など6カ国のみ。これら6カ国の保証上限額の合計は2554億ユーロ。ユーロ圏全体の保証上限額は4400億ユーロでも、実際の融資枠はその6割弱しかない。

しかも、すでにアイルランド、ポルトガルに計437億ユーロを融資済みだ。また、7月21日のユーロ圏首脳会談で合意されたギリシャ2次支援で790億ユーロが拠出される見通しで、残るは1327億ユーロ。これではイタリア、スペインを救済するのは無理と考えられている。

では、EFSF融資枠の早期拡大は可能かというと、それも難しい。9月中旬のEU財務相会合に乗り込んだガイトナー米財務長官がその必要性を説いたが、「部外者とは協議しない」「有権者の理解が得られない」などと一蹴されたという。

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