現行の救急キットでは多くの自衛隊員が死ぬ

戦闘を想定した準備はできていない<下>

確かに、IFAK IIの「基準アイテム」と「個人携行救急品」のアイテム数の違いは、負傷時に眼球を保護するアイカップを除けば18個対8個ではなく、12個対8個にすぎない。陸幕広報室は、これをもって「米軍等の装備も参考に定めており、米陸軍の同装備とおおむね同様の内容品であり、著しく劣っているとの指摘には当たらないと認識している」という見解の根拠にしているのであろう。

IFAK Ⅱのアイカップ(提供:米陸軍)

数字の上では、確かにアイテム数の差は12:8に縮まるのは、間違いない。アイカップを除けば11:8までに減ずる。しかし、これは「員数合わせ」の論議であって、米軍の意識と大きな差がある。たとえば「アイカップ」に関してそのことが顕著に表れている。

陸幕衛生部はアイカップは現時点では必要性がないが、今後見直しをして、導入する可能性もあるとの見解だ。しかし、眼球は人体で脆弱な部位であり、損傷すると取替が効かなく生活面で決定的な影響を与えるため、米軍はまず予防を追求し、散弾銃弾程度は防げるポリカーボネート製のサングラスを支給して、常時着用させる。それでも眼球が損傷した際は、処置を行う者が力まかせに包帯で圧迫を加えても眼球が損傷しないようアイカップを装備することで保護されるよう、戦闘時の心理状態にも考慮している。

対して自衛隊ではそのような生活面まで含めた配慮はない。負傷者の社会復帰に対する認識が甘いのではないだろうか。

米陸軍に装備されているアイテムの特徴

さらに「個人携行救急品」に無く、IFAK IIに装備されているアイテムを検証してみよう。

IFAK II には2本の止血帯が含まれているが、そのうち1本にはポーチが付随している。このポーチがアイテムとしてカウントされていないので、実質アイテム数の違いは依然12:8のままとなる。さらに負傷者記録カード用のペンも含めれば13:8と、アイテム数の差は更に広がる。

IFAK IIで止血帯の数が2本となったことはまず、大腿部の銃創、および爆傷による大腿部の離断(爆風で切断されること)の症例に止血帯を適用した際、1本の止血帯では効果が不足したことが判明したため、米陸軍では2本並べてかける方法(Side by Side)が推奨されるようになったためである。止血帯の数のみならず、その位置づけも見直しがされた。

ポーチに収められた1本目の止血帯は先述のLLEのLife「救命器具」として位置づけられ、いかなる姿勢でも迅速に止血帯を取ることができるよう着用位置が徹底される。止血は極めて迅速に行う必要がある。ポーチ内から止血帯を探して出していたのでは、その間にも出血は続くので、貴重な時間を空費することになる。2本目の止血帯にポーチが付属しているのは、すぐに手の届くところに装着するためだ。1本の止血帯でもキット用ポーチ内部に収納するのか、手の届くところに装着するのでは対応速度がまったく異なる。

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