ソニー「ピクセル」は中国を配慮して作られた 中国を揶揄するようなストーリーを削除

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とはいえ、ハリウッドの映画スタジオにとって、中国から得られる興行収益という魅惑は、ますます抗いがたいものになってきている。アメリカ映画協会によると、アメリカとカナダの2014年の興行収入は、2013年に比べて5%減少し10億4000万ドルに落ち込んでいる一方で、中国では34%増の48億ドルに跳ね上がっているのだ。

中国は今年も順調に新記録を更新しているところである。2015年前半の興行収入は33億ドルであったと、中国国営メディアは報じた。アクション映画「ワイルド・スピード SKY MISSION」は2015年6月前半までに中国で最もチケットを売り、アメリカ・カナダを併せた3億5100万ドルより多い、3億8300万ドルを売り上げた。その次に続いたのは、「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」と「ジュラシック・ワールド」であった。

2014年11月、中国映画製作協会の副会長ワン・ファンリンは、3年以内に中国の映画市場がアメリカを追い越し、世界最大になるだろうと語った。

中国市場の重要性は、メトロ・ゴールドウィン・メイヤースタジオの2012年アクション映画「レッド・ドーン」のリメイクで下した決断で特徴づけたようである。本作のプロデューサー、トリップ・ヴィンソンによると、MGMはアメリカを侵略した兵士の国籍を、製作後に中国から北朝鮮に変更した。MGMにコメントを求めたが返事はなかった。

中国の統制組織は国内映画育成を重視

中国でサーキットに参加するには、映画が張宏森が率いる電影事業管理局の承認を勝ち取らなければならない。張氏は国内テレビの脚本家であり、共産党の上級党員である。「外国映画は空母のように次から次へと中国に入ってきます。我々は大きな重圧と課題に直面しているのです」と張氏は昨年話した。「我々は中国の映画産業をもっと大きく強くする必要があります」。

電影事業管理局は国家広播電影電視総局(SAPPRFT)に属し、中国の議会、国務院に直接報告する。局が統制するのはコミュニケーション分野の国有企業で、中央電視台や中国国際放送を含む。

検閲ガイドラインには2001年に国務院が出した指令が含まれる。指令では、中国の結束、統治、領土の保全を危機にさらしたり、国家の名誉を傷つけたり社会的安定を妨害するコンテンツを禁止している。公衆道徳や国の伝統を傷つけることも禁止されている。

SAPPRFTガイドラインはまた、政府や政治家を軽んじるとみなされる題材の禁止も含まれる。こういったガイドラインの適用範囲を広げることが、昨年11月にサンフォード・パニッチからソニー・ピクチャーズSEOマイケル・リントンに宛てたメールに見られる。パニッチは以来国際映画・テレビ委員会の社長としてソニーに加わった。

メールでは、SAPPRFT職員によって実施されることになった新法案の要点が述べられている。「これまでと違う点は、退廃、占い、狩り、そして一番著しくは性的描写など、以前は指定されなかった他の箇所も、今後彼らは明確に取り上げようとする点です」とパニッチは書いている。

スタジオは、外国映画を輸入し配給する国営複合会社、中国電影グループ社とも協力していかなければならない。いくつかのケースでは、中国電影が投資家の役割も果たす。メール中でソニー幹部は、中国電影が「ピクセル」の経費の10%を補うための共同出資について意見を交換していた。中国電影は共産党員であり、電影事業管理局の前副局長ラ・ペイカンによって運営されている。

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