「ギリシャの次」は、本当に日本なのか? 債務問題の本質がわからない「残念な人々」

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確かに借金で首が回らなくなるというのは個人では起きることだし、その連想で行けば、借金を抱えすぎる国家も「いつかその報いが必ずくる」と考えたくもなる。こう考える人々にとっては、借金に依存したギリシャの危機が続いているというニュースが流れると、「日本で積み上がった公的債務もいずれも問題になる」という懸念を抱くのかもしれない。

財政収支が黒字化しても、税収減になったら意味がない

だが、本当にギリシャと日本は同じだろうか。まずギリシャから考えてみよう。ギリシャは2001年にユーロを導入したが、ユーロ圏という特殊なシステムに組み込まれたまま政府債務が積み上がり、ついに返済不能となった。そして2010年に第1次金融支援(総額1100億ユーロ)が行われ、2012年にも民間部門に対する債務不履行(借金を棒引き)となり、第2次金融支援策(1300億ユーロ)が実現した。

それにもかかわらず、2年以上も経過して危機は再発したので、ギリシャの努力不足(怠慢)によって、再び債務問題が起きたと思われる方も多いだろう。

実際に、この枠組みにおいてギリシャでは財政支出の抑制を続け、「財政収支だけ」は改善しており、いわゆる基礎的財政収支(プライマリーバランス)は2013年から黒字に転じている。ただ財政収支が黒字になっても、債権者側が要求した緊縮財政の要請が厳しかったため、ギリシャ経済は2010年以降名目GDPが25%も縮小し、失業率も大幅に上昇し社会不安が深刻になった。

財政収支だけを無理矢理黒字にしても、そのせいで税収の源泉である名目GDPの規模が縮小すれば、公的債務負担が重くなるので持続可能ではない。2015年に誕生したギリシャの現政権の振る舞いがドイツなど債権団との支援交渉を難しくした部分はある。

だが、問題の根幹は、債権団が財政収支を強引に改善させることに邁進し、緊縮的な政策を余儀なくされたギリシャの経済状況が持続不可能だったことだろう。これは筆者だけではなく、多くの著名な経済学者が指摘している点である。

債務返済のために財政状況を健全化させることがいずれ必要としても、それだけを目指して財政黒字を無理矢理作り出す政策運営を行ってもうまくいかない。これは、過去20年余りデフレという特異な経済停滞が続いていたこれまでの日本において、財政健全化のために増税などの緊縮的な財政政策を試みても、成功しなかった歴史と共通している。

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