対話の技法/対話の苦しみ 善意が無に帰するとき

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そう、バーナード・ショウのような考え方を突き詰めていくと、相手に対して何もできなくなってしまう。何も言えなくなってしまう。何もできないし何も言えないのでは、対話どころか、人間関係自体が成り立たないではないか!

だから、皮肉屋の視点だけではダメだというのである。では、具体的には、どうすればよいのか? これが今回のテーマである。

親切か、お節介か 人間の身勝手な発想

「お節介」という言葉がある。一般に、度が過ぎた親切のことを、お節介という。では、親切とお節介の境界はどこにあるのか? その線引きは意外に難しい。

人間は自分の都合によって、他人のお節介を親切と感じたり、逆に親切をお節介と感じたりするからだ。実に身勝手なものである。

慣れない土地に住むとき、特に外国に住む場合、お節介な人のお世話になることが多い。お節介な人は、洋の東西を問わず、経済発展の度合いを問わず、どこにでも存在するものなのである。

慣れない土地で、知り合いもいないとなると、右も左もわからないまま不安な日々を過ごすことになる。そういうときに頼りになるのが、近所のお節介な人である。親切というより、お節介なくらいで丁度よい。右も左もわからない状態だと、お節介な行為が「とても親切な行為」のように感じられるのだ。

問題になるのは、「とても親切な隣人」が「お節介な隣人」にしか見えなくなったとき。双方が歩み寄って対話的解決を図れればよいが、忍耐のいる人間関係を続けたり、関係が破綻したりすることも少なくない。

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