北朝鮮は「中国景気後退」に耐えられるか 経済は壊滅的な打撃を受ける恐れがある

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北朝鮮の電力は主に水力発電によるものだ。この国はデータが不足していることで有名だが、国連への提出データによると2005年から2009年の間、6つの火力発電所と8つの水力発電所が発電を行なっていた。晩冬と初春は雪解け水と流出する雨水で川が増水し、国内では比較的電力に恵まれた時期となる。だが今春はむしろ近年に比べて停電の回数が多く、長時間に及んだ。平壌に住む外国人によると、首都の中心部でも電力のほぼ100%を燃料発電機に頼っていたという (ふだんは50%を大きく下回る)。

一方、5月と6月上旬の田植えシーズンは、会社員たちが農場に動員され、重労働を手伝い、農民との団結を養い、望まない日焼けをする時期である。今年、北朝鮮は水不足を補うために「より労働者集約型の田植え方法に頼っている」と説明している。田植えの期間も、例年に比べて長引いたようだ。

会社員が農作業で疲労困憊

これにより経済も影響を受けている。工場の従業員や経営者が、操業を止めて同時に姿を消すことになる場合があるからだ。会社員たちにはこなすべき通常の仕事があるが、田畑で時間を過ごさなければならないため、長時間労働と疲労につながる。

田植えのシーズンはやっと終わったが、中国株とおそらく近いうちに世界の商品市場が (かつてないほどのブームの後) かつてないほどの暴落を続けることで、北朝鮮はキャピタリズムの人為的な影響と、経済危機の間に支配を及ぼす群集心理に苦しむことになるだろう。

中国の投資家の80%以上は、機関投資家ではなく小売りまたは個人の投資家だ。

それらの投資家たちは損失に苦しむことになるだろう。それは回り回って、景気後退ではなく、よりゆっくりとした経済成長へとつながるかもしれない。

個人消費は低迷し、小規模の会社は売上げが落ち込むだろう。中国北東部の会社には、北朝鮮から国境を越えて労働者を連れてきていて、また同時に北朝鮮での工場設立にも興味がありそうな会社がある。

現在、世界の物価が下落している。鉄鉱石の価格は最近、過去6年で最安値となり、その後回復したものの、1日でなんと10%も下落した。鉄鉱石は北朝鮮の全輸出の1%程度を占める。他の鉱物と鉱物燃料が、おそらく全輸出のうち30から40%を占める。

石炭や無煙炭などの朝鮮の主要輸出物の国際価格は今年すでに下落傾向にある。それらの商品の価格が、中国の株式市場のスランプを背景に下がり続け、北朝鮮の会社の利益がさらに少なくなるだろうと予想するのは理にかなっている。

中国経済の先行きは誰にも分からない。悲観論者は、中国の銀行の帳簿上の巨額の貸倒金を含む不動産バブルだけでなく、人口学上の変移による構造変化についても語る。だが多くのアナリストは、中国は短期の市場調整を経験しているだけだと示唆している。

だが1つ明らかなことがある。平壌の経済政策立案者たちが巨大な隣国の経済が急降下するのを見ながら「今年はついてない」と思っているのは確実だ。

 (Andray Abrahamian)

※筆者は北朝鮮の人々に起業家精神と経済政策と法律について教えているシンガポールの非営利団体Choson Exchangeのディレクター。ここに表明された意見は著者のものである

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