東芝・田中前社長が就任時に語っていたこと 2013年の就任時に掲げたミッションとは?

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――組織を横断的にするということは、抜本的に組織体系を見直すということですか?

そうですね。特にカンパニーを超えたところ、あるいは研究所を超えて横串を刺して違うモノを作ろうとか、コーポレート側で率先してリードする部隊、組織を作ろうと思います。そこが主体になって技術を合わせて作っていこうと、それをコーポレートの専門部隊でやっていきたい。いろいろな業界の課題を解決するための新しい事業に特化したいです。

――テレビやパソコンについて。今後3~5年で事業を見直す可能性はありますか。

基本的には復活させたいと考えています。テレビはご存じのとおり、厳しい戦いを強いられていますが、われわれが培ってきた映像技術を武器に、テレビ事業を黒字転換させて成長させていきたい。普通の戦いをやっていてはコストだけの勝負になる。東芝ならではの技術を軸に、ハードだけでなく、テレビというものに対してどういう価値をお客様に提供していくか。価値提供、ソリューションなのかコンテンツなのかは別にして、ハードだけではない価値をお客様にお届けしたい。

パソコンは、確かに今はスマホとタブレットに押されています。将来の販売台数予測を見ても、少しずつ台数が落ちると見込まれています。東芝も先日、タブレットの新製品を発表しました。タッチペンで書き込みできるのが特徴で、紙のノートが必要なくなるほど非常に書き味がよい。そういうところには注力します。

従来のパソコンは、BtoB領域に力を入れます。ここ数年は安易にボリュームを稼ぐために、BtoC側、コンシューマーに注力しすぎていました。米デルや米ヒューレット・パッカードは、かなりBtoB向けが多い。一方で東芝は非常に少ないので、BtoB領域でまだまだ伸ばせる。

パソコンの場合、単に文字入力してネットにつなぐだけでは差異化できません。東芝ならではのパソコン技術を使って何ができるかを考えて、BtoB向けのソリューションで事業展開を行っていきたい。コンシューマーに比べると利益率もまあまあいいので、利益体質を確保しながら継続的に安定的な数量を目指したい。市場が減るといっても、まだ年間2億台弱の大きな市場がありますので、復活させたいと考えています。

パソコンのシェアは結果として伸びる形にしたい

――パソコンは残存者利益を狙い、シェアを増やしていくと言うことですか。

そうなればいいですが、撤退する企業があっても、中国メーカーがものすごい勢いで増えています。パソコンで残存者利益を稼ぐようなビジネスモデルは、まだ早い気がします。われわれ東芝は1985年にラップトップを世界で初めて開発した歴史があります。当社ならではの付加価値のついたパソコンを世の中に続々と出し、結果としてシェアが伸びる形にしたいと思っています。

――成長路線を目指すのであれば、ある程度の利益を犠牲にする必要が出てくるのでは?

利益を犠牲にするつもりはありません。新しい創造的成長は、すでにある技術がベースになります。足りない技術は、M&Aをやる場合もありますが、基本的には持っている技術、開発している技術を組み合わせる、あるいは融合することで新しいビジネスをやっていくことになります。

利益を犠牲にしなくても、新しいビジネスの創出、新市場の開拓はできると思っています。それができたらさっさとやれよと言われるかもしれませんが、二律背反をやりたいと思っています。そのためにも技術資産、知的財産をフルに活用したい。

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