混迷スカイマーク再建、「主導権争い」の内実 再生手続きは日米航空大手も巻き込む展開に

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スカイマークは、日本航空(JAL)とANAが長らく寡占してきた国内の航空市場に競争原理を持ち込むべく、1996年に設立された。一方のデルタは、同じ航空連合(アライアンス)に属するJALとアメリカン航空、ANAとユナイテッド航空の組み合わせとは異なり、日本国内に提携先はない。同社が属する航空連合「スカイチーム」にも日本企業の名前はない。

つまり、スカイマークがデルタと組めば、JAL陣営でもANA陣営でもない、独自の立ち位置を維持するという論法になる。説明会後の記者会見で、イントレピッドのフランクリン・プレイCEOは、「デルタは最善の候補だ」と語気を強めた。

イントレピッド案のもう一つの目玉は、中間的追加弁済の実施だ。これは、イントレピッドが東京地方裁判所に届け出た1000億円強の債権のうち、300億円を取り下げることで浮いた15億円を、ほかの債権者への弁済に充てるというもの。これにより、債権者は5%(100万円超の場合)の基本弁済にプラスした形で、早い段階で債権の一部を回収することができる。

両案とも決め手を欠く

8月5日の債権者集会ではこの2つの再生計画案が付議され、債権者の意見を仰ぐことになる。ここで案が可決されるには、次の2つの要件を満たさねばならない。

1つが「債権額に準じた議決権総額の2分の1以上の同意」。もう1つが「議決権行使者のうち過半数の同意」である。

前者については、議決権比率38.0%のイントレピッド以外だと、欧州の航空機メーカーであるエアバス(28.9%)、英航空機エンジンメーカーのロールス・ロイス(15.7%)、米航空機リース会社のCIT(13.4%)が大口債権者。このうち1社でも味方につけば、議決権額ベースでイントレピッド陣営が押さえることになる。同社の代理人である上田裕康弁護士は「大口債権者がスカイマーク案に賛成しているという認識はない」と自信を示す。

一方、議決権者の総数は197人。イントレピッドを含めた前述の大口債権者は頭数ベースでは4人としかカウントされないため、その他の193人の動向が重要となる。このうちの大半は国内の航空関連企業で、ANAと関係のある企業が多い。つまり、議決権者数ベースでは、スカイマーク案が優勢とみられる。

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