マレーシア教育移住の「魅力」と「限界」 「国際自由人」の藤村正憲さんに聞く

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観光でも人気のオランダの風車。美しい風景が広がる

ーーマレーシアに比べて物価が高いのではないでしょうか。

マレーシアでも今は日本と同じ生活をしようとすると、それほど安くはないですよね。オランダでは物価はそれなりにしますが、公立学校ならば16歳までの学費が無料なので、トータルすれば変わらないかもしれません。それからビザの取りやすさも決め手になりました。そしてオランダを拠点にすることで、周辺の国々に車や電車で容易に行き来でき、ヨーロッパ全体を体験できるところが魅力です。

ーーオランダではマレーシアのように英語で学べる学校もあるのでしょうか。

マレーシアも英語がよく通じると言われますが、中には話せない人もいます。オランダのほうがマレーシアよりさらに英語がよく通じる印象です。

公立の学校は原則オランダ語です。それでも小学校を卒業すると誰でもネイティブなみに話せると言われるほど、英語教育は充実しています。私立の学校には英語で教えるところもあります。息子はアメリカンスクールにいったん入学し、オランダ語を学んでから公立学校に入れたいと考えています。

また南国に移住する可能性も

ーーオランダにはどのくらい滞在されるのですか。

特に決めていません。もっといいところがあれば、また移動すると思います。冬の寒さに耐えられなければ、また南国にいくかもしれません。マレーシアは、今でも拠点のひとつです。こうして世界中に拠点を作り、増やしていく。今週末はマルボロ・カレッジの同級生家族とオランダで会う予定があります。こうして、世界中に散らばる仲間たちとつながりができていくでしょう。

これからの時代はおカネより人が大事になっていきます。文化を超えて助け合う仲間が、今後の財産になっていくと期待します。

ーーオランダで、先ほどおっしゃっていた日本人としてのアイデンティティはどのように保っていくのでしょうか。

日本語は、現地の補習校などを利用しながら学ばせていきます。ただ、日本人のアイデンティティにしても、お侍が刀を差していた明治維新前と今では概念が相当変わっているはずです。日本語も変わっていくでしょう。ですから、最終的には自分のルーツをしっかり考えていく、ということができればいいのではないかと考えます。

ーー理想の教育を日本で求めることは難しいですか。

私は教育とは、いかに自由を担保するか、が大事だと思っています。自由に選択できる中で、自分は何をしたいのかを問い続ける訓練です。ですから、子どもを枠にはめてはいけないのです。

日本にもいい学校もあるのですが、一歩学校の外に出たら「ザ・日本」です。私自身、2週間日本にいると、自分の行動が変わってくるのを感じます。相手からどう見られているのかを考えて行動するようになるんです。どうしても枠にはまっていってしまう。

もうひとつ、日本には、文化、国籍関係なく誰とも仲良くするという環境がない。そこが、日本の教育の限界だと思います。

最終的には、社会に依存せず生きて行くことを目指してほしいと考えます。日本は現在、国が国民を守ってくれていますが、国が国民をここまで保護するのは歴史的に見ても珍しい。大企業や国に寄りかかることをゴールと想定する時代ではなくなったということです。

野本 響子 ジャーナリスト

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のもと きょうこ / Kyoko Nomoto

東京都立青山高校、早稲田大学法学部卒業。安田火災海上保険(現損保ジャパン)を経てアスキー入社。『MAC POWER』(アスキー)、『ASAHIパソコン』『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)の編集者を経て現在フリー。『僕がアップルで学んだこと』『企業が『帝国化』する』(ともに松井博著/アスキー新書)編集。著書に『いいね!フェイスブック』(朝日新聞出版)、『マレーシアの学校の○と× アジア子連れ教育移住の第一歩』(Kindle)ほか。1990年代半ば、仲良くなったマレーシア人家族との出会いをきっかけに、マレーシアの子育てに興味を持ち、現在クアラルンプール郊外に長期滞在中。趣味はオーケストラでの楽器演奏。

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