マレーシア教育移住の「魅力」と「限界」 「国際自由人」の藤村正憲さんに聞く

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藤村さんの長男が通ったマルボロ・カレッジは、ジョホール・バルへの教育移住者を増やした立役者となった

ーーマルボロ・カレッジのあと、2015年4月から6月中旬まで日本人学校に行ったのはなぜでしょうか。

海外生まれ、海外育ちとして、日本語教育に限界を感じたからです。息子は香港で生まれ、マカオ、日本、マレーシアと英語を中心に生活してきました。そのため第一言語は英語です。

しかし日本人のアイデンティティを保つためにも日本語は必要だと考え、週1回、学習塾で日本語の補習をし、家庭では日本語を使ってきました。それでも読み書きは弱い。そこで、一定期間日本漬けにしてみようと、まずジョホール・バルの日本人学校にお世話になりました。

日本人学校では先生が絶対的存在

ーー日本人学校ではカルチャーショックはありませんでしたか。

日本語の読み書きもできないのに入れていただき、校長先生をはじめ先生たちにも恵まれました。実は「起立」「気をつけ」「礼」という日本式の習慣すら知らなかったのですが、本人は何をやっているかよくわかっていなかったかもしれません。

ただ、私自身は、小学校2年生にして、すでに日本人の独特な組織や集団行動の原型を見る気がしました。

ーーそれはどんなことですか。

先生が絶対的な存在であることです。社会にでたら正解は存在しないのに、日本の学校では絶対的な存在がつねに正解を用意している。ここが日本人に個人の強さが身に付かない理由ではないでしょうか。

もうひとつが減点方式であることです。

初日に行われた漢字のテストで、日本語の読み書きを知らない息子は0点だったのです。翌日に同じテストがあり、悔しかったのか、勉強して60点台を取りました。ところが先生は「60点台しか取れなかったね」と言う。これが日本の教育だった、と思い出しました。

ーー頑張ったのに、褒めてくれなかったんですね。

そのときに、私が「昨日は0点だったのが、60点を取ったのですから、褒めていただけませんか」とお話したら、先生は「ああ、そうですね」と気が付いてくれた。そんな風に、2カ月間、文化の違いで気になることをお伝えしていったら嫌な顔をせずに聞いてくれて、感謝しています。

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