【産業天気図・建設業】入札制度改革と低価格入札の増加で公共工事に不透明感

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2006年度の建設業の空模様は、上期・下期とも「薄曇り」になりそうだ。
 公共事業費は依然右肩下がり。加えて、防衛施設庁談合摘発の衝撃もさることながら、「脱談合」をキーワードに業界全体に先行き不透明感が生じている。今年1月の改正独占禁止法の施行では、課徴金算定率の大幅引き上げや「密告」制度の導入など、談合規制が一段と強化された。さらに、政府は「談合の温床」と批判されてきた指名競争入札から、応札資格があれば誰でも入札に参加できる一般競争入札に一本化を進めるなど、改革策を矢継ぎ早に打ち出している。
 環境の激変に呼応するように、公共工事ではかつてない規模で低価格での入札が増加している。特に今年に入り、大成建設<1801.東証>のJV(共同企業体)が、あるダム関連工事で発注官庁が提示した予定価格を50%以上割り込む価格で落札するなど、「スーパーゼネコン」による驚異的な低価格入札が続いて話題を呼んだ。
 今上期は、前年度に引き続き堅調な民間需要と、低調な官需のコントラストが基調となる。近年独り勝ちの様相を深めるスーパーゼネコンも、国内建設事業自体の伸び悩み状況を打破する方向性を模索している。病院や学校建築で実績のある清水建設<1803.東証>や、PFI事業に注力してきた大林組<1802.東証>など、得意分野の深耕・収益確保が至上命題となってきた。こうした中、大手の一角・鹿島<1812.東証>は今年度からの中期経営計画で、電子デバイスや医療福祉など民間建築分野での受注強化を目標に掲げた。先行する清水や準大手の戸田建設<1860.東証>などとのシェアの奪い合いが注目される。
 下期は、上期の流れを引き継ぎつつも、新たなトピックとして「入札ボンド」制度の導入がある。試験的導入が予定されている同制度では、国土交通省直轄工事入札の応札業者すべてに、損保や前払い保証会社などからの工事履行の保証を予備的に求める。保証機関は建設業者の財務内容を中心に査定するため、財務に不安のある業者は「工事参入機会が減るのではないか」と懸念。「現状、準大手といえども財務内容上、保証を与えられない企業もあるのでは」(損保業者)との観測もあり、実際の運用次第では業界再編を加速させよう。
 また、今年度は原油高からの資材高騰懸念が一段と強まりそうだ。近年順調に業績を伸ばしてきた長谷工コーポレーション<1808.東証>も、今07年3月期の会社計画では、増収ながら営業利益は前期比3.9%減の583億円を想定、慎重な姿勢を見せている。
【鈴木謙太郎記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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