「いきなり!ステーキ」は店舗戦略も非常識だ 赤坂サカスに期間限定店を作ったワケ

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「しょうゆをベースとしたステーキソース。にんにく、わさびのような薬味を使った日本ならではのステーキの食べ方を提供することで、現地の店との差別化を図りたい」(川野本部長)。米国産のアンガスビーフなども現地調達となれば食材費を抑制でき、日本と同じように安価なステーキを武器に集客ができるとみている。

肉ブームで卸業者の姿勢も変化

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赤坂サカス店のメニュー表

日本における飲食店経営では通常、FLコスト(売上高に占める材料費と人件費の割合)は6割程度が相場。対して、いきなりのFLコストは約8割にのぼる。それを立ち食いスタイルで客の回転率を上げ、収益を確保しているのが同チェーンの強みだ。

だがここに来て、懸案材料も頭をもたげている。牛肉価格の高騰だ。同社は仕入れ価格の上昇を理由に、5月に米国産のリブロースステーキを1グラム当たり5.5円から6円に値上げした。さらに、豪州産の牛肉価格も上昇していることで、今秋にも豪州産ヒレステーキ(現行1グラム当たり8円)の値上げを検討しているようだ。

さらに、昨今の肉ブームの影響で、卸業者の姿勢にも変化がみられるという。通常であれば、調達量を増やせばスケールメリットが働き、購入価格は下がる。が、今は購入量を増やせば、それだけ需要があると見て、卸業者が販売価格を引き上げる状況だ。

つまり、高速出店によって牛肉の購入量が増えれば、その分だけ、食材コストが上昇することになる。こうした状況の中で、出店ペースと牛肉の調達費、さらにはステーキの提供価格をどうバランスを取っていくか。非常識な出店戦略で急成長してきた、いきなり!ステーキの真価が問われている。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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