できる人は、摩擦を恐れず「なぜ?」と問う 危険!「思考逃避」という落とし穴(下)

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ここで、もうひとつの選択肢をご紹介します。「今は18時15分ですが、ところで、なぜ時間を知りたいのでしょうか?」と聞くのです。

「つべこべ言わずに時間を教えればよいのだ」と言われるかもしれませんが、一方で「そろそろ次の打ち合わせに行かねばならないから、取材ペースを上げてほしい」などと、相手の本当の意図を引き出せる可能性があります。あ、今は大丈夫ですけれどね(笑)。

相手の質問の「真の意図」を聞く重要性

――よかった、ありがとうございます(笑)。

宇田 左近(うだ・さこん)ビジネス・ブレークスルー大学経営学部長。荏原製作所取締役、原子力損害賠償・廃炉等支援機構参与(東京電力調達委員会委員長)、日米医学医療交流財団理事。 マッキンゼー・アンド・カンパニー等を経て現職。インフラ系企業の企業変革、および金融機関の企業変革・組織改革に従事。また医療機関における医療経営革新を継続的に支援。東京電力福島原子力発電所事故調査委員会調査統括等を歴任。

どのように返事をするのが正解なのか、答えがあるわけではありません。しかし、時には「なぜ時間を知りたいのですか?」と聞くことによって、さらに相手の考えややりたいことがよくわかり、それに応じることができるかもしれない、ということなのです。

これはもちろん、時間を聞かれたときに限った話ではありません。多くの人は所属組織の中で、日常的に、先輩や上司、あるいは顧客から質問をされたり、同意を求められたり、あるいは何かお願いをされたりするはずです。

そのようなときには、黙って言われたままに応じることで、お互いの関係がよりよいものになったり、より信頼されるようになることも多いと思います。このような場合、通常は相手との間の摩擦を極力なくす方向で思考が動き始めます。

しかし、少し考えてみてください。相手は本当に、知りたいことを質問しているのでしょうか? やってもらいたいことを的確に表現しているのでしょうか? 的のずれた質問や要請をしているかもしれないと考えたことはありますか?

――すみません、考えたことはないのですが、自分を振り返ると、的のずれた質問をしてしまうことはよくあります。

もちろん、すぐに顔に出して、「それ、何言ってんですか?」などと聞く必要はありませんが、相手の要求は必ずしもピンポイントではないかもしれないのです。むしろ多くの場合、ずれていると見たほうがよいでしょう。やや難しい言い方をすれば、「依頼主の依頼は、必ずしもその当該本人の課題にとって、本質的解決に合致していない可能性がある」ということなのです。

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