AV女優の経験が、「営業職」にも生きる理由 台本なしで撮影をした経験が武器に

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「だけど、どんどんやりがいのない現場が増えてしまって。それで体調不良もあって、引退を決めました」

2014年6月、約3年のAV女優人生はひっそりと幕を閉じた。

何気ない一言で開けた営業としてのキャリア

引退後のキャリアは、真っ白だった。自分は今後どうやって生きていくのか。引退作品の現場で、スタッフにそう話すと、「だったらうちで営業をやってみたら」と声を掛けられた。トントン拍子に話は進み、葵は面接を受け、現職であるAVメーカーplumへの就職が決まった。初めての会社員生活は戸惑いと驚きの連続だった。

「まずは敬語が使えない。面接のときも、つい『マジで?』って返しちゃって、『まずは敬語の勉強をしようか』って言われたくらいですから(笑)。最初は先輩について、店舗を回って、先輩がどんなふうにお客さんと話すのか、現場で見ながら覚えていきました」

主な仕事内容は、販促用のPOPやレビュー動画の作成。DVDを観た上で、作品のポイントをキャッチーにまとめ、それを販売店舗に設置してもらえるよう提案に行く。また、作品の見どころを自ら解説した動画をYouTubeにアップしたり、大手販売チェーンが開く月1回の定例会議に参加し、自社の商品のプレゼンテーションも行っている。

「プレゼンをしていると、AV女優だった経験が生きているなと思います。単に配られた資料を読み上げるだけじゃつまらない。だから私はなるべく紙に書いていないことを、自分の言葉で話すようにしているんです。それができるのは、台本も何もない中で撮影をしていたAV女優の経験があったからだと思います」

営業としてはまだまだ若葉マーク。「店舗の担当者の人とは何を話したらいいのかわからなくて息が詰まることもある」と照れ笑いするが、ただひとつ心に決めていることがある。

「良いものは良い、悪いものは悪いがポリシー。だから何でも『この作品は良いですよ』とは勧められません。良いものはちゃんとお勧めするけど、自分が良くないと思ったのはそこまで推さない。だって嘘をついたら信用がなくなるから。私がお勧めしたものを観て、誰かがつまらないと思ったら、私が勧めている他の作品も不信感を持たれることになる。だから正直に営業するようにしています」

仕事に必要なのは、信用。目先の利益のために信用を損なうことは絶対にしない。それが、新米営業・葵まりんの美学だ。

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