(第14回)グーグルとトヨタは本質的に異なる企業

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だから、グーグルがアメリカの経済政策過程に関与したとか、影響を与えたという話を聞いたことがない。もともとアメリカには「財界」というものが存在しないから当然かもしれないが、アメリカでも、自動車産業は政府と密接に関連していた。かつての鉄鋼や鉄道もそうだった。だが、グーグルは、これらとまったく異なる企業なのである。

グーグルが国家と関係するのは、独占禁止法の関係だ。つまり、国とは敵対関係にある。AT&Tやマイクロソフトもそうだった。アメリカ政府は、巨大企業を育てようとするのでなく、壊そうとしている。日本との何たる違いだろう。

ただし、最も根源的な意味においては、グーグルは国家と関係している。なぜなら、グーグルの検索の基本である「リンクの多さによる順位づけ」とはある種の投票、すなわち民主主義だからだ。国が強権的に介入してその順位づけをねじ曲げてしまえば、グーグルの検索は否定されてしまうことになる。グーグルは、民主主義社会でないと存在できない企業なのである。

中国政府による検閲がグーグルにとって大問題であったことが、それを明確に示している。この問題は中国版サイトに香港版サイトへのリンクを張る形式で決着した(したがって中国から世界のニュースを検閲なしで読める)。自動車会社は民主国家だろうが独裁国家だろうが、関係なく存在しうる。むしろ独裁国家のほうが有利だろう。独フォルクスワーゲンの誕生がそれを示している。

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