中国の独裁主義による発展は間違いなく脆い インドの民主主義が中国に勝る理由

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インドでは40年前にもこの問題が議論された。当時の首相インディラ・ガンディーが非常事態宣言したときのことである。彼女は、民主主義がインドの発展を妨げているという信念に基づき、市民の自由を一時的に剥奪。反対派のリーダーを収監し、マスコミを検閲した。この問題は1977年にガンジーを解任して民主主義を復活させた選挙で解決した。

だが、「パン対自由」のジレンマはいまだに残っている。つまり、政府が国民の権利と自由を尊重しつつ、経済成長と繁栄をもたらすことができるかどうか、ということである。近年のインド政治の機能不全は、この問題が今日いかに重要であるかを物語っている。

中国とインドの決定的な違い

私はベルの答えが正しいとは確信していない。急速な産業化と発展は、何百万人もの中国人を貧困から救ったかもしれないが、同時に多大な犠牲を伴った。猛スピードで成長してきた中国は、その過程で多くの人を傷付けてきた。

人々はインドの硬直した官僚政治を中国の効率の良い政治と比べ、外国人投資家のためのインドの赤いテープを中国の赤いカーペットと、インドの派閥中心政治を中国共産党の階層型組織と比べたいと思うかもしれない。だが、インドがその多元的民主主義により、自国の多様性にうまく対処できたことは疑う余地がない。多元的民主主義はインドの全国民に、国家に強く関係しているという感覚をもたらしている。

つまり、インドの民主主義に正当性を与えているのは、上流階級ではなく、貧しく恵まれない国民の大集団であるということだ。貧しい人々は結局投票する。彼らは選挙に参加することが、政府に自分たちの要求を知らせるもっとも有効な方法だと知っているからである。

彼らが政府に不満を感じている場合は、反乱や暴動を始めるよりむしろ、次の選挙でその指導者に反対票を投じる。暴力運動が実際に発生した場合は、折衷案による民主主義的プロセスによって暴動を鎮めることが多い。昨日の過激派は今日の州首相になり、明日は反対派のリーダーになることだって可能なのである。

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