ギリシャ危機、支援実施には3つの壁がある 改革関連法案可決でも危機は終わらない

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IMFは債務の持続可能性が確保されていることと、12カ月先までの財政資金の手当てができていることを融資実行の条件としており、EU側がさらに踏み込んだ債務軽減に取り組まない限り、ギリシャ支援への参加を見送る可能性を示唆している。IMFのギリシャ向け二次支援プログラムは2016年3月まで続く予定だが、支払いを約束した残りの164億ユーロの融資を実行するには、債務負担軽減での合意が必要としている。

ギリシャの政府債務の保有主体は、EU、IMF、ECBといった公的部門が8割程度を占め、残り2割がギリシャの銀行や年金基金などの国内勢の割合が大きい。2012年の債務交換時と同様にギリシャの銀行にさらなる債務再編を求めても、銀行救済費用がかさむだけで目立った債務削減効果は得られない。

どこも元本削減には応じない

他方、公的部門の債務再編は、優先弁済順位が設定されたIMFが応じる可能性は低く、EUとECBはEU条約によって財政救済を禁じられており、元本削減(ヘアカット)に応じることは法律の縛りで難しい。

この週末にもギリシャの三次支援協議の開始が正式承認されれば、関係諸機関(かつてトロイカと呼ばれたEU、IMF、ECBの3機関)が債務の持続可能性を検証し、融資の実行に必要な改革条件の検討を重ね、支援の覚書(MoU)を作成する手筈となる。ただ、大規模な債務負担の軽減がない限り、債務の持続可能性が確保できないのであれば、プログラムは作成段階で行き詰まってしまう恐れもある。

2012年11月のユーロ圏財務相会議では、ギリシャが改革条件を満たせば、基礎的財政収支を黒字化した後に、債務の持続可能性を確保するうえで必要な場合、追加の債務軽減措置を検討することを約束していた。だが、ギリシャに対する債権者側の不信感が高まっており、12日のユーロ圏首脳会議の合意文書では、ギリシャが第1回目の支援実行の審査条件を満たした場合に初めて、必要に応じて債務負担の軽減措置を検討するとしている。

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