ギリシャ危機、支援実施には3つの壁がある 改革関連法案可決でも危機は終わらない

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つなぎ資金の検討を進めてきた欧州委員会の作業部会は14日、欧州金融安定メカニズム(EFSM)の資金を7月20日分のつなぎ資金に利用することを正式に提案した。EFSMは2010年5月のギリシャ危機時に欧州金融安定基金(EFSF)とともに創設されたEU(欧州連合)の金融安全網で、EFSFがユーロ圏諸国の政府保証付き債券を融資財源としていたのに対し、EFSMはEUの既存予算を融資の原資としている。EFSMは600億ユーロの融資能力を持つが、アイルランドとポルトガルの金融支援に利用したことで、現在利用可能な金額は115億ユーロと7月のつなぎ分を賄える。

ところが、EFSM資金の利用には、EU加盟国ではあるがユーロ圏に属していない英国政府が猛反発している。英国政府は2012年のEU首脳会議で、EU予算に基づくEFSMをこれ以上ユーロ圏諸国の救済に利用しないとの約束を取り付けている。2017年にEUからの離脱の是非を問う国民投票を控える英国政府としては、EFSM利用に関する約束が反故にされれば、EU予算の使い道に厳しい眼差しを送る英国民を刺激しかねないとの警戒感がある。

そこで欧州委員会は、非ユーロ圏諸国のEFSMへの拠出分については、つなぎ資金が焦げ付いた場合の損失保証を提供することを検討している。保証の原資としては、ECBが保有するギリシャ国債の満期償還時の超過収益を用いるとしており、2015年6月末までの利用可能額は36億ユーロとなる。ただ、英国政府が提案を受け入れるのか、ユーロ圏諸国が英国への特別な配慮に難色を示さないかは不透明だ。20日までに残された時間は少なく、支払いを履行しなかった場合の影響が懸念される。

公的部門の債務再編めぐりIMFとドイツが対立

第2のハードルは、債務再編を巡ってIMFとドイツ政府とが対立し、支援協議が中断する恐れがあることだ。

12日のユーロ圏首脳会議に合わせてIMFが作成した文書によれば、ギリシャの公的債務残高の対GDP比率は2014年の177%から向こう2年間で200%近くに膨れ上がり、2022年の時点でも170%で高止まりすると予想する。現在、EU諸国が検討の可能性を示唆しているよりも遥かに大規模な債務負担の軽減をしない限り、債務の持続可能性が確保できないとしている。2012年末の段階のIMFの想定では、債務比率は2020年までに124%、2022年までに110%を大きく下回る水準に低下するとされていた。

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